23話 ページ23
処置を終えて数時間。
まだ日が暮れていない時間に、Aが目を覚ました。
目を覚ましてすぐ、右手は温かく。
Aが手を握り返すと、
「A」
聞き慣れた、実弥の声が聞こえた。
Aは涙を流す。
『実弥……来てくれたの?』
「あぁ、雷生から報告受けて、すぐ向かった」
『……ありがとう』
Aは実弥の手を握って、涙を流し続けた。
『約束、したのにって、思った』
「あァ、テメェは生きるんだよ」
実弥の言葉にAは鼻を啜った。
二人が暫く黙り続けていると、実弥の小さな声が聞こえた。
「俺、今から最低なこと言っていいかァ」
『ん?』
「……アイツと、お前に、鬼殺隊を辞めてくれ、って思ってる」
実弥の表情は至って真剣で。
Aは実弥の言葉を黙って待つ。
「……鬼の居ないどっか別の世界で、生きててほしいんだ。
大事だから、好きだから、俺が守るから、どこか遠くで、生きててほしい」
『……』
「ごめんな、A……」
実弥はAの手を両手で握りしめて、顔を俯かせた。
その告白に、Aは唇を噛み締めた。
「A、頼む。
生きてくれ……」
そう言った実弥の声と肩は震えていた。
Aも、実弥の言葉に何も言えなかった。
「悪ぃ、勝手なこと言って」
『ううん……』
こめかみに流れたAの涙を、実弥が拭う。
その時に目が合った。
その瞬間、Aは何とか腕を動かして、実弥の頬を撫でる。
「っ」
『実弥……』
「……」
Aは、実弥の頬を流れる涙を拭った。
その瞬間、実弥はAの手を取って小さく嗚咽をこぼした。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時