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20話 ページ20

「テメェらァ、これくらいの鬼で喚くんじゃねェよォ」

「は、はぃ!」


実弥は舌打ちして下山した。

空は晴れていて、日が登り始めている。


「実弥!疲レタカ?」

「ンなもんじゃねえよ」


実弥は首を回して関節を鳴らすと、人が活動し出した光景を、麓から見ていた。

ここの鬼は狩った。当分、ここの人を脅かす鬼は居なくなる。

それでも、また鬼が来る可能性は低くない。


「クソッタレが」

「実弥……」


実弥が木を殴ると、肩に止まった爽籟が実弥の頬に頭を寄せる。

どうか今は自分の存在で、落ち着いて欲しいと願いながら。

実弥は息を吐くと、爽籟の頬を指の背で撫でた。


「……」


その時の実弥の表情はとても優しく。

爽籟は顔を離すと、実弥と目を合わせた。


「行くかァ」


実弥は麓から離れる。

近くの藤の紋の家を目指して。


「屋敷に着いたら、ゆっくり風呂でも浴びるかァ」


かれこれ一日は入れていないのだ。

それに加えて柱合会議の後。


何かと忙しい一日が終わろうとしていた時だった。


「カァー!カァー!」

「アレハ、……雷生?」

「ァ?」


実弥が立ち止まって腕を出すと、雷生はそこに止まった。


「実弥!実弥!
Aガッ!!」

「っ!」


実弥はこれでもかと言うほど目を見開き、走り出した。

Aが任務に行った場所は、ここから差程遠くは無い位置。

己にもっと速く走れ、と鼓舞しながら速度を限界まで上げていく。

柱になって以来、ここまで速度を出したことがあるだろうか。

実弥はそう思いながら走っていた。


「爽籟、蝶屋敷に向かえ」

「分カッタ」


実弥が鬼殺隊になってから、ほとんど一緒にいる。

だから爽籟には分かる。

今の実弥は、今まで以上に焦っていた。


「A、無事で居ろよォ!」


実弥が村に到着すると、村から人の気配は無かった。

出ていったのか何なのか。

実弥は雷生か案内してくれた屋敷の中に飛び込んだ。


「A!」


実弥はAの名を叫びながら走り回る。

そこで、庭に辿り着いて、庭を更に進んだ所には池があった。


「……」


実弥が息を殺しながら池を覗き込むと、池の水が鈍色に染まっており、

Aが血を流してそこに浮かんでいた。

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時

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