元柱だった隊員【不死川実弥】 (ページ16)

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16話ページ16

柱合会議の後、Aは本部を出ながらしのぶに声をかけた。

『胡蝶ちゃん、』

「はい？」

『時間があればいいんだけど、もし機能回復訓練が始まったり、ある程度目処がついたら、連絡くれるかな？』

「いいですよ、全然」

『本当？良かった！
それじゃ、お願いね！』

Aはしのぶの肩を優しくトントン、と叩いて離れていく。

しのぶはその後ろ姿を見て微笑むと、自身の屋敷に向かった。

しのぶから離れたAは、実弥の隣にさり気なく並んで歩いた。

「……何しに来たァ」

『心配で来たに決まってるでしょ』

いつもの雰囲気とは違い、真剣な表情で実弥に並んだ。

Aは実弥の手を握る。

「テメェはどっちだァ？
あのガキを認めるのか、認めないのか」

『……』

Aはそう問い掛けられて、顔を横に振った。

『私は認めることも否定することも出来ない。
あなたの事を狙わなかったのはすごいと思うけど、それでも所詮鬼は鬼。
人を食べる可能性は低くない』

「そうかィ」

実弥はそう言うと、立ち止まる。

続けてAも止まる。

「何が違ってんだろうなァ……」

その言葉にAは何も言えなかった。

実弥の手を握る力を少し強めれば、実弥もそれだけの力で握り返してくれて。

「……ワリィ」

『いいよ、全然』

Aは辺りを見て、人が居ないのを見ると、実弥の胸に飛び込んだ。

実弥もAを抱きとめて、Aの背中に手を回す。

「ごめんな」

鬼は、人の心を強くすると同時に、弱くする。

鬼を殺すことで、人は強くなる。

同時に、心は弱くなる。

Aは実弥の過去を、少しだけ聞いたことがある。

だからこそ、実弥の心を思うだけ、自分も辛くなる。

目頭が熱くなるのを感じて、Aは実弥の肩に顔を押し付けた。