12話 ページ12
Aはそれらを聞いて、砂利を歩くアリを見つめていた。
だが、それで納得できない者も居て。
「切腹するから何だと言うのか」
『実弥……』
「死にたいなら勝手に死に腐れよォ!
何の保証にもなりはしません!」
「不死川の言う通りです!
人を喰い殺せば取り返しがつかない!
殺された人は戻らない!」
「確かにそうだね」
御館様は、実弥と煉獄の言葉を受け取った。
「人を襲わないという保証が出来ない。証明ができない。
ただ、人を襲うということも、証明ができない」
その一言に、実弥は息を飲み、Aは息を吐いた。
「禰豆子は二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子のために三人の者の命が懸けられている。
それを否定するためには、否定する側にもそれ以上のものを差し出さねばならない。
皆にその意思はあるかな?」
実弥が悔しそうに歯を食いしばる。
煉獄も黙り込んだ。
「それに、私の子供たちに伝えておくことがある。
この炭治郎は鬼舞辻と遭遇している」
御館様の言葉に、全員が驚いた。
Aは驚くと言うよりも、面白そうに笑うだけだが。
炭治郎は、それから柱達に質問攻めにされたが、御館様の指示に再度黙り込んだ。
全員が黙り込んだのを感じて、御館様は続ける。
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて、追手を放っているんだよ。
その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せたしっぽを掴んで放したくは無い。
恐らく禰豆子には、鬼舞辻にとっても予想外の何かが起こっていると思うんだ」
その言葉に黙り込む一同。
「分かってくれるかな?」
と、問いかける御館様。
だが、実弥は口を開く。
「分かりません、御館様ァ」
全員が実弥を見た。
「人間ならば生かしておいても良いが、鬼はダメです。
これまで俺たち鬼殺隊がどれだけの思いで戦い、どれだけの者が犠牲となっていったかァ!」
Aは実弥の言葉に一理あると思う。
実弥もAも、共に親友を亡くした。
実弥は過去に家族も亡くしたことがあると、Aは聞いたことがある。
「承知できない」
だからこそ、理解できない事もあるのだと、Aは頷く。
どちらの心境も思うと、胸が痛かった。
そう思っていると、実弥が唐突に自身の腕に刀を当て、
『実弥!』
Aが声をあげたが、実弥はお構い無く腕を切り、血で砂利を赤く染めた。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時