第３話 ページ34
「おー、ごくろーさん」
手を上げて言う真希の顔は、より一層ニヤついている。既に席についたパンダも。
彼等２人がニヤついている理由は、彼等が座っている席順にある。
Aから見て左側に真希が。右側に狗巻が。手前側から奥にパンダが2人分陣取っている。
つまりはAの座る場所がない、という事である。もしくは。
「真希、私の座る場所ないから詰めてくれる？」
「いやぁ、無理だな」
「パンダ君」
「俺、パンダ。パンダ、ゴロゴロする生き物」
まだ何も言ってないんだけど。と言いながら、まさかと焦る。焦りながら高揚してしまう。
「あたしはほら、でかいから詰めるって無理だけど棘だったら良いんじゃね？」
この１人と１匹――――２人はおはかりくださったのだ。Aと狗巻の距離を縮めようとしてくださったのだ。物理的にも、心理的にも。
はた迷惑、という思いとナイス！ という矛盾する思いを抱き、なんとも言えない溜息をついた。
ゴン！ と強く大皿をちゃぶ台に叩きつける。唐揚げが飛んだ。狗巻の隣に行く前、真希に笑いかけてパンダの耳を少しワザと踏む。
５.１対４.９の割合でほんの少しだけ、はた迷惑が勝った行動だった。
初めこそ緊張して狗巻の隣で小さくなっていたが、時間がたってタコ焼きを楽しんでいれば自然に意中の相手が隣にいることも慣れた。
平日の夜ということもあり、特に見る者もなかったので適当にニュースをかけて駄弁る。
「ふぅん、人気俳優が一般女性と不倫ねぇ」
もぐ、とタコ焼きを口に含みながらAは言う。「この俳優さんって結構綺麗な女優と結婚してるよね？」
なんで不倫なんかするんだろ。そう言えば真希がテレビに目を向けたままAに問うた。
「Aはまた彼氏つくらねーの？」
それに吃驚して、もう１個……と取ろうとしたタコ焼きを落としてしまった。
「なにを？」
こいつ、真希なにを言っているんだ。サディストなのか？ そうなのか？ あたしの反応を見て楽しんでいるのか？
落ち着こうと思い、とりあえずお茶を飲もうとするが湯飲みの中は空。こういう時に。Aは歯ぎしりした。
ええ……、と笑った顔は引きつっているだろう。「なんで？」
「おい真希ぃ」
Aが困ってんだろ、と言ったのはパンダだった。以外、と思ってしまう。いつも下世話で、はた迷惑なのに。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (
レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます！ これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください！ (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます！ (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作！？ ありがとうございます！ 嬉しいです！！ コメントもありがとうございました！ (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀｀)bｸﾞｯ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゆ | 作成日時：2020年10月28日 22時
