第1話 ページ2
歯磨きと、洗顔を終えたAは、再度指紋がついてしまった鏡の前に座った。
洗顔の時にも使用した、ヘアバンドで前髪を上げて、鏡の下に置いてあるポーチを取り出す。
ポーチは軽かった。
ジィ……、とポーチのチャックを開け、中身を全て取り出す。
長年使って、中の方が汚れてしまったハート柄のポーチの中には、日焼け止め、ファンデーションとチーク、そして薬用リップとみが入っていた。
Aはそれを順に使っていく。
次に、鏡の下からヘア・アイロンを取り出し、コンセントをさす。
温めている間、少しだけニュースに意識を向けた。
ヘア・アイロンで髪の毛が痛んでは困るので、クリームを塗ってから、胸当たりの毛先をまとめ始める。内側に丸まるように。内側にまとまるように。
毛先が内側にまとまってから、Aは前髪もまとめ始めた。
全てが――――学校へ行く準備の全てが終わり、Aは姿見の布を引っ張る。
布は床に引き込まれるように落ちて行った。
そこに映るのは、もう1年は着た制服に包まれている、黒髪のなんだかポヤ、とした女子生徒。
強さを表しているような暗い色の制服に、自分で似合わない、とすら感じてしまう。
それでも、化粧を、髪型をなおすなんて真似はしない。このメイクで良い、この髪で良い。Aは頷く。
時計を見れば、もう少しで登校しなければいけない時間。時間がなかった。
玄関でローファーを履き、深呼吸をする。
冷たいドアノブを握り、戸を押せばもう本調子になって来た陽光が彼女を照らした。
学校の敷地内にある生徒用の寮に、Aは去年から住んでいた。つまりは1人暮らしである。もう1年も住み込んでいるのだから、慣れたものだ。
生徒用の寮がある学校とは何とも珍しい、と感じる人がいるだろう。
ローファーをならして教室へと向かうAが通っている学校は、そんな中でも群を抜いて珍しい。
東京都郊外にある、私立の宗教系学校。それがAの通っている学校だとされている。
あくまで、表向きは。
Aを含める生徒、教師、その他一部の学校関係者だけが、「日本に2校しかない公立の呪術教育機関の1校で、多くの呪術師が卒業後もこの学校を拠点に活動をし、教育のみならず任務の斡旋、サポートも行っている呪術界の要」だという事を、理解している。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時