第一話 登場 ページ3
ＮＯside
＊
「そういえば棘」
グダグダと東京校、京都校揃って駄弁っている中、唐突に真希が棘を振り返る。棘はパンダのお腹に決め続けていた拳を止めると、「こんぶ？」と首を傾げた。
「聞いたか？”アイツ”が帰ってくるって噂」
「しゃけしゃけ」
「お、それ俺も聞いたぞ。悟が上層部の奴らこねくり回して復学させたんだって？」
パンダもノリノリで話に加わりだす。すると、近くでコーラを一気飲みし、思う存分げっぷを出した悠仁とそれにキレ散らかしていた野薔薇も二年ズの話に疑問符を浮かべた。
「なんすか、”アイツ”って」
「何だよお前ら、恵か五条から聞いてないのか？”アイツ”ってのはな…」
真希が不必要に声を潜めて一年二人に顔を近づける。その瞬間、バーンッ！！と派手な音を立てて建物の扉が開け放たれた。
目にもとまらぬ速さで駆け込んできたのは——金髪を靡かせた、少女。
『いっぬまきせっんぱーい！』
「めんったい、こ…」
入ってきた勢いのまま、無防備にポカンと口を開けていた棘に飛びつく。棘は突然の圧迫にうまく息が吸えなくなった模様、一気に顔を青くさせた。
「ちょっ、棘！しっかりしろ！！息を吸え、息を！」
「おいパンダ、そいつ引きはがせ！」
パンダと真希が慌てて棘の救出にかかる。何とか二人を引きはがすと、金髪の少女は先輩を瀕死に追い込んだ直後とは思えない爽やかな笑顔を浮かべた。
『真希先輩、パンダ先輩、お久しぶりです！お元気そうで何よりです！』
「この状況でよくもまあ…」
「よせ真希、こいつはこういうやつだ…」
「ゴホッゴホッ…しゃけ…」
少女は二年ズの反応の意味がよく分からないのか、はたまた分からないフリをしているのか、不思議そうに三人の顔を見回す。と、突然、その茶色の瞳を輝かせた。
『見たことない顔！もしかして一年生！？』
ずいっと近寄ったのは、悠仁と野薔薇。二人は顔を見合わせると、「そうだけど」と頷いた。
『あれだよね、特級呪物食べちゃった子と藁人形の子！伏黒くんから聞いてるよ。私は一年の銀野A。これから同級生だし、仲良くしようね』
ニコッと満面の笑みを浮かべて右手を差し出す。野薔薇は躊躇うように半歩後ろに下がったが、悠仁は当然のようにさらりと手を握った。
「俺一年、虎杖悠仁。んでこっちは釘崎野薔薇。同級生かー、よろしくな！」
今、この場に居合わせた全ての人間が思っただろう…あ、コイツら同じタイプの人間だ、と。
＊
- 金 運: ★☆☆☆☆
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