48.願わくば貴方も幸せに ページ48
ずっと隣にいてくれてありがとう。
・
「今日は付き合ってくれてどうもありがとう」
「死ね」
「死ね！？」
唐突に罵ってんじゃねーよ！！と思ったが、よくよく考えたらそれはいつもの爆豪くんなのでツッコミはいらなかった。
近くにあったカフェに入ってお昼を食べている。午後からお互い予定があるから、食べ終えたらこのデートはおしまいになる。
「楽しかったよ」
「……腹ァ決まったか？」
「………」
「オイ」
散々「記念」とか言って我儘を聞いてもらったが、全然覚悟は決まっていなかった。
「余計なこと考えてんじゃねーよ」
余程私が暗い顔をしていたのか、察したように爆豪くんがガタリと音を立てて立ち上がった。
そして、おもむろに、ポッケに突っ込んだままだった手を出して、私の頭に乗せた。
…え？……え？
「ヒーローになりたくて雄英来たんだろ」
「……うん」
「それに、もうあいつらと会えないとか思うな。帰ってきたら全員プロヒーローになってやがるから」
「うん」
「そんときは、お前を俺のサイドキックにでもしてやるよ」
にや、と性格の悪そうな笑みを浮かべた爆豪くん。ああ、いつもの爆豪くんだ。
それは彼なりの激励なのか…いや、激励じゃないのかもしれない。
でも、目の奥が熱くなるのを感じた。
やばい、泣く、やめろこの爆発さん太郎。
「……頼んでないよ。押し付けがましいね爆豪くん。入るならベストジーニストの事務所がいい」
「ンなことしたらどうなるか分かってんだろーな…？」
「いだだだだ！！！頭が、頭が割れるううう！！！！」
「割れねーよ。…なあ」
「ん？」
「……強くなって来いよ」
そう言った爆豪くんの顔は、見たことのない、ちょっぴり優しい笑顔だった。
ああ、私はこの笑顔を一生忘れないんだろうなあ、っていうくらい、胸が苦しくなってしまう笑顔。
そんな彼に背中を押されるようにして、一週間後、私は日本を旅立った。
轟くんがくれた抱き枕と、爆豪くんとおそろいのマグカップと、A組のみんながくれた餞別を抱えて。
・
(さようなら、爆豪くん)
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作者名：- | 作成日時：2017年8月15日 6時
