80. 能面と執事 ページ30
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「ただいま〜…
ってあれ？ 誰もいない。」
ドアを開けてくれた、濱田も不思議そうな顔。
部屋にをあちこち見てもいないので自室へ向かう。
「もしかしたら、俺らに気ぃつかって
皆さんどこかに行ったのかもしれないですね」
「気なんてつかわなくていいのに…」
わざわざ、新婚だからって…
やだ、なんか新婚って響きいいなぁ。
「A？」
「は、はい？！」
「ふは、そないビビらんでもええやん。」
あ、なんか空気が甘い。
「はい、荷物置いて。」
するっと手から抜ける荷物。
絡め取られる指先。
あぁ、このまま堕ちていきたい。
彼は柔らかく握られた両手を見つめて口を開いた。
「…する？」
「……聞かないでよ」
「ふ、ごめん」
そのあと崇裕は、優しく笑って、
優しすぎて壊れそうなくらいに昨日の夢を塗り替えてくれた。
「……んん…」
朝起きてみれば、隣にはすやすやと口を少しだけ開けて眠る愛おしい人。
しばらくその寝顔を見ていると
「A……様、」
寝言、か。
寝ている間でも、私の名前を呼んでくれるなんて
嬉しかった。
するすると崇裕の胸元に寄り添って目を閉じる。
「…ずっと傍におるから。｣
ハッキリとした声が聞こえてふと見上げる。
能面執事の能面ははがれ、
優しく微笑んでた。
End
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作者名：ちい
| 作成日時：2017年10月9日 0時
