能面執事２【紫】 (ページ21)

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71. 夢と秘密ページ21

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「ん……」

夢ならば覚めないで。

強く願ったって、夢は夢だったのかもしれない。

次目を覚ました時、彼はもうどこにも居なくて、

一枚だけ着てるキャミソールと、

私に掛けられた燕尾服のジャケット。

思い出した時涙が零れた。

それを拭ってくれた彼に、

もう2度と会うことは出来ない。

ジャケットからはタバコの匂いが強く染み込んでいた。

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服を着てしばらくした後、

部屋をノックする音が聞こえた。

濱田だと思い、急いでドアを開ける。

「っあ……、A様…」

居たのは、心配げに見つめる重岡だった。

「、あれ？重岡じゃん！どうしたの？」

明るく振る舞ってる

のもわざとって、きっとわかってるんだろうな。

ほら、目線が下がってってる。

「お迎えにあがりました。

帰りましょう。」

きっと重岡は全部分かってるんだろうな。

今日のことは、やっぱり夢だったんだろう。

部屋に戻り、濱田に選んでもらったドレスを持ち、

ジャケットはドレスの下に持った。

今日の夢は誰にも言えない、秘密。

車を準備しに行った重岡の後ろにいた式場の方に、

ドレスを渡し、車へ向かう廊下で

ジャケットを抱きしめて、

私は今日何度目か分からない涙をそっと流した。