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街頭が冷たくなった誰もいない遊具を、ぼんやりと照らし出している。
昔はもっと大きく見えていたはずなのに、この鉄棒も、シーソーも、ブランコもこんなに小さく感じる。
けれど、この雰囲気はあの頃のまま、何も変わっていないような気がした。
「あ、あった…」
そして、この公園の目玉の、複合遊具。
曲がりくねった滑り台や小さなジャングルジムみたいな訳の分からない手すりみたいなのがたくさんついていて、上にのぼると小さな屋根の付いた家のようなものが付いたこの遊具。
これだけで何だか秘密基地のような、子供心をくすぐる妙な魅力があったものだ。
嫌なことがあった時は、家からおやつを沢山リュックに詰め込んで、あの家のような部分で友達と籠城していたっけ。
あの頃から俺の引きこもり癖は付いてたんだ。
と、妙な納得をしたところで、俺はその複合遊具に歩み寄り、梯子を使って上にのぼってみた。
小学生の頃は昇るのにとても長く感じていたのに、今となっては一瞬で昇れてしまう。
あぁ、こんなに短かったっけ？と、懐かしい気持ちと、自分がこんなに大きくなったことのズレみたいなものを感じて少し寂しい気もした。
遊具の上から見える景色も、あの時とはまるで違って見えた。
「今の俺には、ちょっと狭いな…」
短い通路のようなものを渡って、俺は屋根の付いたドーム型の家のような部分へと進んでいった。
青い壁に赤いプラスチックの屋根。
壁には透明の円形の窓が付いている。
俺はその屋根をくぐった瞬間、軽く悲鳴を上げた。
と、言うのも、だってまさかこんなとこにいるなんて誰も思わない。
こんなとこに、人が寝てるなんて、誰も思わないよ。
「うわっ！？え？！」
その人も、俺の顔を見て顔面真っ青にして驚いていた。
でもよく見ると、その服装は俺と同じ高校の制服のように見える。
顔も随分若い。
俺と同じ高校の生徒か？
「あ、す、すみません…。こんなとこで寝てたら、びっくりしますよね…。ほんと、ごめんなさい…」
「え？あ、いや、まぁ…。こちらこそ、急に入ってきてごめんなさい…」
何故俺がこんな風に謝らなきゃいけないのか分からないが、なんだか他人の家に土足で入ったような変な錯覚に襲われて、とっさに謝ってしまったのだ。
「っていうか、その制服…」
「あ、あぁ…あの僕…」
しどろもどろな彼は、やがてこう答えた。
「名前は…宮世…と、言います…。宮世、琉弥…」
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年1月11日 18時
