溺れる偽愛 (ページ8)

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部室に行く途中、私が田中樹の後ろを付いて行ってるのが目立つようで、周りの女子に関わらず男子の視線も痛く感じた。

女子たちはコソコソ話しているし、私がきっと田中樹のことを好きだと勘違いでもしているのだろう。

残念ながら私はこの人に1ミリも魅力を感じないからそんなに事を荒立てないでほしい。

数分経って部室に着くと、誰もいなくて太陽の光だけが差し込んでいる空間。

『ちょっと待ってて』

そう言って机をがさがさ探し始める彼を横目で見ながら、静かに端っこで待つ私。

こんなところを誰かに見られたら私…虐められるかも…。

そんな恐怖に包まれて、早く見つけろと心の中で祈った。

『あれ…』

え、なに今の…。

なに“あれ”って…。

その一言だけで嫌な予感がして、まさかとは思えど予感だけで終わって欲しいと願う。

『ごめん。どっかいっちゃった』

「は…？」

どっかいっちゃった。

なにその軽々しい口調。

「いや、もっとちゃんと探してください！」

『探したよ。でもないんだもん』

「家にあるとか！」

『それはないな。昨日ここでペン使ったあと忘れないように置いてったから』

「そんな…」

見事に嫌な予感が的中して、体の力が全て抜けるような感覚になった。

やっぱり貸すんじゃなかった…。

あんな大事なもの。

『なんでそんなに落ち込むんだよ。たかがペンだろ』

「…え」

『俺が買ってやるよ。どこのペン？』

何言ってんの…。

やっぱり私、こいつなんか大っ嫌い。

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