溺れる偽愛 (ページ18)

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『Aちゃんって俺のこと知ってたの？』

「いや…昨日まで知らなかった」

『嘘！？俺はちょっとだけ知ってたのに』

「え、、」

私を知ってるという予想外の発言に、疑いの眼差しを彼に向けた。

『いや、講義でたまに見かけてたからちょっとは知ってたよ。だから俺のことも知ってると思ってたのに。ショックだなー』

「ごめん…」

『んはっ、嘘だよ』

笑ってそんなフォローを入れる彼を、少しだけ優しい人だなんて思ってしまった。

私は彼を知らなくて、彼は私を知っていた。

それがどことなく嬉しくて。

…自惚れすぎかな。

『Aちゃんってサークルとか入ってるの？』

「え？」

『色々知りたいじゃん？恋人にしては君のこと知らなすぎるから』

「あぁ…そうだよね」

“恋人”

そんなフレーズが聞き慣れなすぎて、言葉を飲み込むのに時間がかかる。

「サークルは入ってないよ」

『え、そうなんだ』

「田中くんは入ってるんでしょ？なんのサークルなの？」

『ん？俺も入ってないよ』

「え？じゃあ…昨日の部室ってなんの…」

『あぁ、友達のサークルにたまに遊びに行ったりしてるからそれで』

「へー…そうなんだ」

『友達って言っても慎太郎なんだけど。Aちゃんも知ってるんでしょ？慎太郎のこと』

「んまぁね」

知ってるから君にペンを失くされたんだけどね。

そんな言い方なんて出来るわけもなく。

思い止まって喉のあたりで止めた。

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