僕たちの帰る場所3 (ページ50)

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驚く俺たちに構わず、翔太は続ける。

nb「貴方はきっと、正義感が強くて、素敵な女性なんだと思います。
今回だって、ご主人のためを思ったからこそ、こうして自ら行動を起こした。そういうところ、俺も真似したいなって思います」

彼女も彼女で、驚きながらも翔太の話に耳を傾けている。褒められて悪い気はしていないようだ。

nb「でもその分、自分自身が間違ったり否定されたりするのをすごく怖がる、繊細な人でもあるんだと思います。
外に響くほど大きな声で主張していたのだって、きっとその裏返しですよね」

一転、ギクリとする彼女。
しかし反論してこないところを見ると、図星ということだろうか。

nb「ご主人の体調不良の原因がこの店にないことは、先ほど店長からお話した通りです。本当は、ご自身でももうわかってらっしゃるんじゃないですか。
なのに無理に戦おうと相手のことを悪く言うなんて、貴方のような人なら後で自己嫌悪することになるに決まってます。
だから僕は、あなたのことが心配なんです」

優しい語り口と困ったように寄せてみせた眉は、ともすればあざとく見えるけれど、彼女に対しては効果絶大だったらしい。
それに、翔太らしからぬ、と言っては失礼だが、極めて冷静な分析には反論の余地もない。

『そのとおりね…貴方には負けたわ。今回のことはこれで終わりにする。もちろん、補償も必要ない。手間をかけさせて悪かったわね』
nb「いえ、僕もつい出過ぎたことを言って申し訳ありませんでした」

『貴方、レストランなんかで働くより、カウンセラーの方が向いているんじゃないの？』
意地悪な問いかけをする彼女。しかし翔太はこれにも見事に切り返した。

nb「実はこの店のシェフは僕の幼馴染で、恩人で、ずっとそばにいたい人なんです。だから彼がいる限り、僕はこの店を離れる気はありません。
それに何より、ここでの仕事はとても楽しいですしね」

『あら、そうなの？だったら幼馴染さん、今回のことでは落ち込んでいらしたでしょう。お詫びを伝えておいて』

nb「かしこまりました。その代わりと言ってはなんですが、僕の大好きなこの店のこと、貴方にも好きになってもらえたら嬉しいです」

翔太の言葉に、俺はじんわりと心が温まるのを感じていた。