僕たちの帰る場所3 (ページ42)

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あり得ない！ページ42

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バイトを始めてから早数ヶ月、ようやく店の仕事にも慣れてきた。
近頃は春休みだからか僕と同世代のお客さんも増えていて、なんとなく店の雰囲気も賑やかだ。
そんなある日…

「いらっしゃいませ！お客さま、何名さまで…」
『ちょっと、この店どうなってるのよ！』

席へと案内しようとした僕を押しのけて、1人の女性が店に飛び込んできた。40代くらいだろうか、やけに濃いアイメイクが目立っていて、何だかキツそうな雰囲気の人だ。

ab「お客さま、いかがなさいましたか」
すかさず阿部ちゃんが割って入ってきてくれたけれど、女性は阿部ちゃんにつかみかかりながら大声で叫ぶ。

『うちの夫、この店の料理を食べて食中毒になったのよ。どうしてくれるのよ！』

…え？今なんて言った？まさかこの店で食中毒だなんて、そんなことあるはず…

しかし当然の如く、女性が放った言葉に周りのお客さんもざわめいている。
例え何もないとしても、この状況は不味いよね…？

ab「お客さま、恐れ入りますが別室でお話を伺えますでしょうか」
オロオロしてばかりの僕に対し、流石というべきか、一瞬で態勢を立て直して女性を誘導している阿部ちゃん。

ab「ラウごめん、応接にご案内するから、ふっかに事情説明して来てもらってくれる？多分今なら休憩室にいると思う」
なんて、的確な指示までくれる。

ふっかさんもふっかさんで、僕の話を聞いて流石に驚いた顔はしたけれど、そこは店長らしく
fk「行くか」
なんて気合いを入れて応接に向かっていった。

さらに、ホールに戻ってみると、佐久間くんや照くんが他のお客さんのフォローを始めていた。

iw「すみません皆さん、ご心配をおかけしています」sk「本日のお代は頂きませんので…」

こんな時でも、みんなのチームワークにはやっぱり感心させられる。
だけど、いくらみんなが優秀でも、食中毒を出したなんて噂がたてばお店への大打撃は免れない。
なんとか上手く収まるといいのだけれど…

体験したことのない事態に、僕の不安は膨らむばかりだった。