僕たちの帰る場所3 (ページ29)

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いよいよ決戦の日、僕はホームルームが終わるや否や教室を飛び出し、屋上へと向かった。

彼女の靴箱には、彼女がやったのと同じように呼び出しの手紙を入れてある。だから、ホワイトデーのお返しというところまでは彼女もわかっているだろう。
だけど、その後に一大イベントがあることは、果たして気付いているだろうか。

やがて現れた彼女は、いつもとなんら変わらない様子だった。それとは対照的に、僕は意識しないように気をつければつけるほど鼓動が早くなっていく。

『バレンタインの仕返し？』
やっぱり思ったとおりだ。

「正解。これ、良かったら食べて」
そう言ってプレッツェルの箱を取り出す。すると、彼女が驚きの表情に変わった。

『まさか手作り？』
「うん、だからちょっと不格好だけど…」

そうなのだ。
あのあと何回か練習してみたものの、やっぱり最後まで完璧な形には出来なかった。
味は大丈夫だろうけど、喜んでもらえるか自信がないなあ…

『ありがとう。わざわざ手作りなんて、その気持ちだけで充分』

けれど、北野さんは優しく微笑んでくれた。

その時、
『ラウール、言うなら今だぞ』
なんて舘さまの声が聞こえたのはきっと気のせいだ。

「…ねえ北野さん、なんで僕がわざわざ手作りしたんだと思う？」
『え？』

「普段の僕だったら、きっとこんなことしない」
『…』

「北野さんだから作ったんだよ」
『…それって！』

ru「僕の言ってる意味、伝わった？
でも、ちゃんと言葉にしたいから、改めて言わせてね。

…好きです。僕と付き合ってください」

一瞬、時が止まったような静寂が訪れた。
そして、彼女はゆっくりと深呼吸すると、こう言った。

『私もあなたのことが好きです。よろしくお願いします』

その時僕の目に映った彼女の顔は今まで見たことがないくらい真っ赤で、だけどすごく綺麗だったんだ。