僕たちの帰る場所3 (ページ2)

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「北野さん！」
『来てくれたんだ』

誰もいない屋上にひとりたたずむ彼女。
そして差し出されたのは、可愛らしいクッキーの包みだった。

『これ、よかったら食べて。チーズ味だからバレンタインらしくないけど、ちゃんと味見して作りたかったし、チョコは大量に貰ってるだろうと思ったから』

「手作りなんだ。めちゃくちゃ嬉しい」

舞い上がる僕を見て、彼女が言った。
『そんな笑顔も出来るんだ』

「え？」

『いや、いつもクールで、クラスのみんなとも距離を置いてるみたいだったから、そんな顔見せてくれたのが意外で』
「それ、猫カフェの時に僕も全く同じこと思ってたんだけど」
『確かに、私も人のこと言えなかったね』

そう言って笑い合う僕たち。

『そんな私が柄にもなく手作りしたんだから、大事に食べてよ』
「わかってるって。ありがとうね」
『うん。また屋上で』

そう言って行こうとする彼女の背中に、僕は問いかける。

「そういえば、なんでわざわざ放課後だったの？」

『…印象に残りたかったから。
昼休みだったらいつもどおり過ぎるし、どうせ他にもたくさん女の子が来たんでしょう。
だからあえて、放課後まで待ってたんだ』

ねえ、そんな風に考えるって、やっぱり僕のこと…

『なんか恥ずかしいじゃん。じゃあまたね』

逃げるように去っていった彼女を見送った後も、僕はしばらくその場から動けずにいたんだ。