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いつも通り卸を回ってみるけれど、今日はなかなか食材に集中出来ない。
「…ダメだな」
早々に見切りをつけた俺は、近くの公園のベンチに腰を下ろし、今日のことを思い返す。


みんなが心配してくれているのに、俺は目も合わせず、それどころか酷いことを言ってしまった。気づいた時にはもう遅くて、あの時の佐久間の顔といったらもう…思い出したくもないような悲痛な顔だった。

俺の過去のことはみんなには関係ないのだから、耐えなきゃいけない。そう思って頑張って来たけれど、そのせいで逆にみんなに嫌な思いをさせている。
卸巡りの成果も未だに出ていない上、今日のことがあって、今頃みんなにどんな風に言われているかと思うと、なかなか店に戻る勇気が出ない。


でも、それじゃダメだよな。俺だってそれはわかっている。
たとえ冷たい目を向けられたとしても、やってしまったこともきちんと謝れないようでは男らしくない。

「っしゃ、いくぞ」

散々悩んだ末、ひとり小さく気合を入れると、俺はZuhause の扉を開けた。


「ただいま。みんな今日はごめん。酷いこと言った」
開口一番で謝罪する俺、振り向くみんな。

nb「おかえり。涼太今日はごめん。みんなに涼太の話バラした」
なぜかやけに低めの声で翔太が応じる。


一瞬の沈黙の後、阿部ちゃんがボソッと呟いた。
ab「…もしかして今舘さまのモノマネした?」
iw「似てねぇ」
sk「クオリティの低さよ」

それをきっかけに、どっと笑うみんな。
え、こんな展開あり…?

nb「うっせぇ。わざとだよ」
ab「もう絶対嘘じゃん」
総ツッコミを受けて照れ笑いの翔太。
きっと、翔太なりに俺を気遣ってくれたのだろう。

…あれ、てか、あいつ俺の話バラしたって言った…?

fk「翔太から色々聞いた。知らなかったこととは言え、ごめんな」
「翔太バラしたんだ。なんか俺、前の店のことはみんなには関係ないなんて変な意地はっちゃって」
fk「舘さまらしいっちゃらしいけど、今後は限界まで溜め込むのはなしな。あと翔太にちゃんとお礼言っとけよ」
「もちろん」


前回といい今回といい、翔太はしれっと動いて俺を助けてくれる。照も言っていたけど、気分屋のくせに気がきくのはとても不思議だ。

翔太のこと、なんでも知ってるなんて思っていたけれど、案外そうでもないのかもしれないな。

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作者名:わかめ | 作成日時:2020年1月27日 9時

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