10話 ページ10
「__ちゃーん、Aちゃーん」
「ん、しょ、ぴ……」
「あは、起きた。びっくりしたんすよ、急に倒れるんやもん」
Aは鳥居のした、ひんやりした石段のうえに寝転んだ状態で目を覚ました。悪戯っぽい、いつものショッピの瞳がこちらを見ている。
ゆっくり体を起こすと、髪にひっついた苔がぱらぱらと落ちて、不快感にゔっと眉を顰める。
太ももをちいさな蟻が這っている。パシンと払うと体液が爪に入った。ふと、虫を躊躇いなく殺せるようになってしまったのはいつからだろうかと、思う。
「…あの、わたし」
「んー、Aにはまだ
ぽんぽん、とショッピはやさしくAの頭を撫でる。そういえば彼はよくわたしの頭を撫でてくれるなあとAはぼんやり思った。彼なりのスキンシップなのだろうが。
「ゆっくり、じっくり、思い出していきましょうね」
そういって微笑んだ神様の目は、神様らしからぬ欲と固執に染まっているように思えた。
けれどそんな不信感も、彼にかかれば夏の夢のようにふっと掻き消えてしまう。
夏の魔力とはすごいもので、吹いても消えぬ蚊取り線香のように、それこそ彼のやっているように、人間の人格すら仕留めてしまうことが出来るのだから。
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桜華(プロフ) - こんにちは!初コメント失礼致します!神様モチーフの素敵な作品、これからどんなことが待っているのかワクワクが止まりません!無理のないよう、更新頑張ってください!青,い,鳥の方、フォロリク失礼致します。 (2022年7月3日 15時) (レス) @page8 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kaniska | 作成日時:2022年7月1日 17時