14話 ページ14
「さいきん見かけんよな。夏野サン」
「え？」
「やから、夏野サン」
天乃は首をひねった。鳥井希の問いの意図がつかめなかったからだ。
夏休みに入って、遊びたくてしかたがないらしい鳥井は毎日のように幼なじみ兼悪友の天乃、おれのところへ押しかけてくる。
天乃のほうも、クーラーの壊れた我が家は暑いし宿題をするなんて以ての外だしで特に断る理由もないので、なんとなしにふたりは連れ立って夏休みを過ごしていた。
駄菓子屋のばあちゃんがサービスしてくれた＿＿なかば押し付けるかたちで＿＿カリカリ君のサイダー味をゆっくりたのしみながら、ふと先刻の問いの「夏野サン」と、とあるクラスメイトの顔が結びつく。
「ああ、」
「思い出した？」
「夏野Aさん」
「そうそう」
名前を口に出すと、よりはっきりと彼女のことが頭に浮かぶ。どうしたって互いの距離が近いこんな田舎でもなお、都会の風をまとって周囲を遠ざけていたA、きっと彼女といちどでも学級をともにしたことのある男なら誰もが淡い恋心を抱いているであろうA。
かくいう天乃だって鳥井だってAとあわよくば付き合いたいと思っているし、彼女を想いながら「処理」したことだって一度や二度の話ではない。
「で、Aさんがなんやて」
「最近おらんやんって」
「あー」
天乃はうなずいてから、アイスの最後のひとくちを食べきって棒を折った。そのへんに放っておけば明日の早朝には無くなっているだろう。田舎にはゴミ拾いが趣味のオバサンが多いから。
すこし汚れてべとついたくちもとを手首でぐいと拭って、天乃はベンチから立ち上がった。
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桜華(プロフ) - こんにちは！初コメント失礼致します！神様モチーフの素敵な作品、これからどんなことが待っているのかワクワクが止まりません！無理のないよう、更新頑張ってください！青,い,鳥の方、フォロリク失礼致します。 (2022年7月3日 15時) (
レス) @page8 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaniska | 作成日時：2022年7月1日 17時
