【薄桜鬼】純血を巡る者６ (ページ5)

今日:13 hit、昨日:34 hit、合計:70,612 hit

＊＊＊＊ページ5

あれだけ探しても
見つからなかった養父が今、
姉様の目の前にいる。

姉様は少し涙ぐんでいて、
今にも飛びつきそうな勢いだ。

それを平助君が押さえてくれている。

そんな姉様とは対照的に、
綱道は再会を喜ぶ様子もない。

寧ろ片眉を顰めて、
忌々しそうに姉様を見つめていた。

綱道「お前の父になりたくてなったわけではない」

A「お前は、姉様を養子に迎えたはずだ」

綱道「養子に迎えたのも、
お前たち雪村家を滅ぼすための計画の一部だ。
そんな娘、ただの道具でしかないわ」

斎藤「非道な…」

藤堂「あんたがいなくなってから、
千鶴がどんだけ探したと思ってんだよ！」

綱道「探して欲しいなどと頼んだ覚えはない」

私たちへの復讐のため？

そんなくだらない事の為に、
姉様を利用した…？

許せない……。
姉様は、道具なんかじゃない！

無意識に走り出そうと体が動いたようだが、
それを斎藤さんに捕まり、
綱道に近づく事は叶わなかった。

A「離してください！
今すぐ始末しなければ！」

斎藤「落ち着け。
あんたを羅刹の前に出すわけにはいかぬ」

どれだけ藻掻いても、
男の人の力には勝てない。

仕方なくて大人しくする事にした。

大人しくなったのを見たからなのか、
綱道はハハハッと笑う。

その笑いがまた、怒りを湧き上がらせた。

綱道「威勢のいい頭領様だ。
そんな頭領様にいい事を教えてやろう。
お前たちの村を落としたのは土佐の人間だ。
ちょっと鬼の情報を渡してやったら、
その力を借りようと動いてくれたよ。
人とは愚かだね」

A「この、外道が…っ」

綱道「さて、お喋りの時間はこれで終いだ。
お前が死ねば雪村家は終わる。
千鶴など、その後で始末すればいい」

A「姉様には、指一本触れさせない！」

綱道「では、ここにいる羅刹を
お前に始末する事が出来るか？
こいつらは鬼ではない。
正真正銘、人間だった者たちだ」

A「だったら何？
羅刹を人間と認識した事など一度もない！」

動かない私を見て、
綱道は片方の口角を上げて
嘲笑うかのように笑みを浮かべている。

羅刹で盾を作っているくせに！
何を勝ち誇ったような顔をしてるのよ！

綱道「私はこれで、お暇させてもらうよ。
お前が生きていれば、また会う事になるやもしれんな」

A「待て！綱道！！」

フッと消える最後に見えたのは、
綱道の不敵な笑みだった。