【薄桜鬼】純血を巡る者６ (ページ23)

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１１２：その頃＜原田左之助＞ページ23

原田「はあ、何で何も言わねえんだよ」

近藤「……………」

原田「黙ってちゃ、分かんねえだろ！」

何を問いかけても、
何の話をしても、
目の前にいる近藤さんは
ただ微笑んでいるだけで何も言ってはくれない。

だんだん苛立ちが増してきて、
俺の口調も激しくなる。

原田「あんたがそんなんでどうすんだよ！
なあ、何があったってんだよ！
頼むから、何か言ってくれよ！」

井上「勇さん、そろそろ行こうか」

突如出てきたのは源さん。

何で、源さんがここに…？

近藤さんは源さんを見上げ、
小さく頷くと、たった一言だけ呟いた。

近藤「また、会おう」

それだけ告げ、
近藤さんは源さんと光溢れる襖の向こうへ歩く。

その襖の向こうには、一人の人影。

それが誰かなんて分からなくて、
立ち上がって確かめようにも足は動かない。

必死に手を伸ばしてみても、
俺の手は空を切るだけで、
近藤さんや源さんには届かなかった。

行ってはいけない。

そこへ行ってしまったら二度と会えないと、
何故か俺はそう思ってしまった。

どれだけ届かなくても、
どれだけ触れられなくても、
この手を下げてしまったが最後。

光溢れる襖が閉じるまで、
俺は手を伸ばし続けた。

――――――――――………

はっと目を開くと、
そこには見慣れた天井。

額には酷い脂汗が流れ、勢いよく起き上がった。

原田「ゆ、夢…？」

酷い脂汗を手の甲で拭い、
布団から抜け出して襖を開けた。

もちろんそこに光なんてなくて、
月が輝く墨染の景色が広がっている。

永倉「左之、どうしたんだよ？」

原田「新八…。
いや、変な夢を見ちまってな…」

永倉「……お前もか？」

新八が隣の部屋から顔を覗かせた。

お前もかって、新八もなのか？

新八に、今見たばかりの夢の話をする。

すると不思議な事に、
新八も同じような夢を見ていた。

こんな偶然って、あるもんなのか？

ただ、新八と俺の夢の違いが一つだけあった。

永倉「俺には、「すまなかった」って…」

俺たちは縁側に座り、
綺麗に浮かんだ月を眺めた。

原田「また会おう、か…」

永倉「あの頃のようには、戻れねえのにな。
だけどよ、夢でも近藤さんに会えた事が、
何故かすげえ嬉しかったんだよ」

俺たちはどれだけ未練があんだよ。

あれだけ未練なんてねえと思って出て来たのによ…。

それだけ俺たちにとって新選組は、
近藤さんはデカい存在だったって事なんだよな…。