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96:知らない感情 ページ30

京を離れて二日目のお昼。
私たちは大坂城へと辿り着いた。


戦国時代。

難攻不落と呼ばれたお城は
やはり広くて大きい。

城門から中へ入ったはいいけど、
私は例の如く迷子になったんだ。

その都度、姉様や斎藤さんが助けてくれたけど…。
土方さんには呆れられて怒られた。


大坂城で見知った人たちの顔を見て、
新選組の幹部隊士さんたちは
誰一人欠けていない事に安堵した。

しかし、そこで聞いた言葉は、私たちを落胆させる。




島田「慶喜公は既に、江戸へ撤退していました」




前代未聞だ。

この戦は幕府の戦いでもあるのに、
幕府側の頂点が、
そそくさと尻尾を巻いて逃げ出していたのだから。


ちー君が言っていた通り、

"この日本の行く末は、既に決まっている"

のではないかと思わせた。


この大坂城で仕切り直し、
薩長軍を迎え撃とうとしていた土方さんの思惑は散り、
この大坂城からの撤退も余儀なくされた私たちは、
江戸へ向かう為に船へ乗り込んだ。


冬の海の夜風は冷たく、
まるで私たちの心情を表しているかのようで物悲しい。

こんな夜に眠れるはずもなく、
甲板に出て海を眺めていた。


これからどうなって行くんだろう?

戦に出ていない民たちの生活は
ほとんど変わっていないのに、
戦っている新選組の立場や生活は、
どんどん移り変わってしまっている。


"人間は愚かだ"

と言う、ちー君の口癖が頭から離れない。




斎藤「風邪を引くぞ」

A「斎藤さんこそ、風邪、引いちゃいますよ」




斎藤さんも眠れないのか、
私がいる甲板へと出てきたようだ。

二人並んで、
真っ黒い海を静かに眺めているだけ。

特に会話もない。
いや、何を話していいのか分からないんだ。

それでも気まずさはなく、
ただ時間が過ぎて行くだけ。

船と波の音だけがする空の下、
隣に立っていた斎藤さんの体がグラつき、
船の淵に肘が落ちたのが見えた。




斎藤「ぐ…っ!」

A「衝動…っ!
斎藤さん、少し移動して座りましょう」




変若水を飲んでから、
斎藤さんの吸血衝動は一度も起きていなかった。

確かに衝動が起きる頻度などは
個人差があるって聞いた事があったけど、
二日経っても起きていなかったから油断していた。


船の上という事もあり、
斎藤さんを甲板から船室の壁へと移動させて座らせる。

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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 斎藤さんと恋仲になって欲しいです。 (2020年5月24日 22時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2019年9月19日 7時

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