5章 4-2 ページ27
「中也君」
目を細めてヨコハマを見下ろす中也に、安吾からの通信が届く。
「おそらく太宰君はすでに排除されています。
Aさんの安否も確認出来ていません。
この意味が判りますね？」
感情を押し殺して話す安吾の声を聞きながら、中也はみずからの手袋を剥ぐ。
構やしねェよ、と、口を動かした。
「いいのですか？」
安吾は問を重ねる。
「報酬である僕の命を受け取っていませんが」
「思いあがんなよ」
中也は安吾の声を遮るように告げた。
一人、ヨコハマ上空に降りようとする中也の表情は誰にも見えない。
静かな声だけが安吾に届けられる。
「……六年前の手前は下っ端の潜入捜査官だ」
すべてを諒解している響きで中也は続けた。
「澁澤の投入に反対しても、聞き入れられなかったんだろ？」
「……」
通信の向こうで、安吾が声を詰まらせる。
これは俺の戯言だが、と中也が独り言のように呟いた。
「太宰のポンクツは、あの中にいる。間違いねェ。
それとAはこの程度で死ぬようなやつでもねぇ」
中也が見ているのは、ヨコハマを暴れまわる巨大な龍だ。
「太宰を一発殴ってAを救けねェと気が済まねェんだよ」
宣言するだけして、中也は切るぞ、と短く云って通信を切る。
「──……頼みます」
この言葉が中也に届いたかは判らない。
ただ、中也は自らの意思でもって鴻鵠の後部ハッチに立ち、下界を見下ろす。
「まもなく目標地点上空です」という声に、ちらりと目線を向けた。
背後にいたのは、長い髪をアップにまとめた吊り目の女性だ。
背広を着こなす彼女の姿に、中也は僅かに考えるそぶりを見せたのち、眉を上げた。
「お前、あん時の嬢か」
「辻村です」
自ら名のり、辻村は中也を見つめる。
「……本当に行く気ですか？」
「ああ」
「無理です！」
即答した中也を、辻村は目じりを上げて睨みつける。
「下は地獄ですよ！」
辻村からすれば、眼下に見える龍はあきらかに人知を超えた化け物。
それと戦うなど、無理がある。
能力者とて人間だ。
にもかかわらず、己を過信して戦えば──死にますよ。
そう辻村は断言する。
けれと中也は、辻村の言葉を鼻で笑った。
「そういうのはな、ビビって帰っていい理由にゃなんねェんだよ」
端然と告げ、中也は一歩、前へと踏み出す。
硬い靴音が響いた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます！！そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい！終始悶えます（笑） (2018年9月9日 1時) (
レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ！見たかった……これからも頑張ってください！！ (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます！！本編の方も読んでくださってるんですね！ありがとうございます！すごく嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです！これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 18時
