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Aは、静かな世界にいた。
見回すと、床は畳、三方は障子や土壁に囲まれていた。
方向にして右側の障子が開け放たれ、庭が見える。
そこには小さな池があり、どこかに川でもあるのかチョロチョロと水の音がした。
本丸に来たばかりの時のように、空は暗く重く、気味の悪い空気が漂っている。
「合っていて良かった」
背後から声がかかり、振り向くと、部屋の隅で三日月宗近が立っていた。
体の半分が翳り、表情が読めない。
「名前はな、こんのすけがつぶやいているのが耳に入ったのだ。
苗字は賭けであったが、その賭けには勝てたようだ」
ゆっくりと近づいてくる三日月宗近。
Aは振り向いた体制で動きを止めていた。
三日月宗近が目の前に来て、その姿が半分堕ちかけているのを見ても、Aは表情一つ動かさなかった。
「俺は、人が許せぬ。
誰であろうと、お前が初代と三代目と違おうと、俺には関係のないことだ。
俺は2度とあのような屈辱を味合わぬよう、その前に人を殺すのみだ」
ゆっくりと、Aの首に手を伸ばす三日月宗近。
抵抗することも、逃げ出そうともしないAに、三日月宗近は腹が立った。
自分もそうであれば、あのような思いをすることはなかったのではないかと、そして『これ』では、自分の気持ちなど理解してくれるはずもないと。
苦しみなど知らぬというようなその顔が、不愉快でならなかった。
Aの首に回された両手に、グッと力が込められた。
「………」
それでもAは呻き声一つあげなかった。
徐々に力が強くなり、その手がゆっくりと上へ持ち上げられていく。
右、左と地面から足が離れ、ついには三日月宗近の目線より少し上に、Aの目線があった。
「……」
それでも何も言わない。
三日月宗近の周りに、目に見えるほどに濃くなっている黒い邪気が漂っていた。
左半分を覆う翳の中で、三日月宗近の瞳が赤く光った。
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藍央(プロフ) - そうですか、すいません余計でしたね。 (2019年3月4日 12時) (レス) id: 3d1ad82df4 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 藍央さん» 申し訳ありませんが、キャラクターの性格、話し方等の指摘は受け付けておりません。詳しくは続編に書いてありますが、私も私なりの考えのもと書いています。ご了承お願いいたします (2019年3月3日 23時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
藍央(プロフ) - 江雪や宗三の話し方はわざとですか?仲間の刀剣男士には普通に喋ってもいいと思うのですが… 話はすごく面白いです! (2019年3月3日 21時) (レス) id: 3d1ad82df4 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 面影草さん» お気遣い、ありがとうございます(^^)私は、気にしないようにしているので、今後、もしまた悲しいコメントがあったとしても、放置してしていただいて構いません。いつも読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m (2019年2月26日 9時) (レス) id: 3090af0f06 (このIDを非表示/違反報告)
面影草(プロフ) - ブラッディ・ドリーマーさん» 返信ありがとうございます。文面がちょっと受け取る側からしたら火に油を注いでるように感じたかもしれません。喧嘩をするつもりはありません。今後、このようなコメントがなくなると良いですね。 (2019年2月26日 9時) (レス) id: 50c6120963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あき | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月7日 16時