38 ページ39
そして、日が昇り、沈む頃、皆に疲れが浮かぶ頃、不意に結界が解かれた。
それに一番に反応したのは一期だった。
体当たりをするような勢いで障子を開け、中の状況を見ると、膝から崩れ落ちた。
「鍛刀したのですか……」
一期が絶望の声を上げた。
「した。欠けたものたちを全員」
Aの背後にあるのは何十振りもの刀。
刀掛けに置かれたそれぞれに、読めない文字の札が貼ってあった。
「何故……私はもう、弟たちに顔向けできないと、言ったはずです!!」
「任務だから」
そう答えたAの後ろでは、次々と刀が人の体へと変化していた。
一期一振の背後から、それを見た刀剣男士たちは、目をそらすもの、その場から立ち去るもの、膝から崩れ落ちるものがいた。
皆同じように、悲惨な最期、助けることができなかった事実が鮮明に思い出されていた。
「いち兄……?」
最初に、人の体を得た薬研藤四郎が信じられないとでも言うように呟いた。
「薬研……」
「どうして俺っち……あの時、折れたはず……」
自分の体をペタペタと触り、本体を抜く。
戦場で弟をかばい、確かに折れた自身。
だが、傷一つないそれを見て、さらに混乱した様子を見せた。
「貴様……これは、どういうことだ?」
人の体を得た他の刀剣男士たちも、同じような反応を見せていることに気づき、岩融が聞いた。
「神降ろし」
「神降ろし……?」
Aは淡々と説明した。
「神に仕える巫女が、信託を得るために、己の身に神を降ろすこと。
降ろす先を私ではなく、身代わり札をつけた短刀に向ければ、この本丸にいた付喪神を降ろすことは難しく無い」
『難しくない』と言っているが、数多く存在する本丸で折れた刀の中から、この本丸に存在していた付喪神を降ろすのには、相当の集中力と力がいる。
まだ混乱の中、理解できないでいる全員は、ぽかんとしてそれを聞いていた。
ここで、ことの困難さを知っているのはこんのすけのみだった。
602人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藍央(プロフ) - そうですか、すいません余計でしたね。 (2019年3月4日 12時) (レス) id: 3d1ad82df4 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 藍央さん» 申し訳ありませんが、キャラクターの性格、話し方等の指摘は受け付けておりません。詳しくは続編に書いてありますが、私も私なりの考えのもと書いています。ご了承お願いいたします (2019年3月3日 23時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
藍央(プロフ) - 江雪や宗三の話し方はわざとですか?仲間の刀剣男士には普通に喋ってもいいと思うのですが… 話はすごく面白いです! (2019年3月3日 21時) (レス) id: 3d1ad82df4 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 面影草さん» お気遣い、ありがとうございます(^^)私は、気にしないようにしているので、今後、もしまた悲しいコメントがあったとしても、放置してしていただいて構いません。いつも読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m (2019年2月26日 9時) (レス) id: 3090af0f06 (このIDを非表示/違反報告)
面影草(プロフ) - ブラッディ・ドリーマーさん» 返信ありがとうございます。文面がちょっと受け取る側からしたら火に油を注いでるように感じたかもしれません。喧嘩をするつもりはありません。今後、このようなコメントがなくなると良いですね。 (2019年2月26日 9時) (レス) id: 50c6120963 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あき | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月7日 16時