検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:297,849 hit

好きなんだろう ページ6

「……せん、ぱい…」


ぼろぼろと泣く私を見て、五条先輩はまたため息をついた。ベッドに腰かけ、私の涙を優しく親指で拭いながら、五条先輩は続ける。


「…怒ってはないけど、びっくりはした。任務から帰ったら、お前が地面に転がってんだからさ。心臓止まるかと思ったわ、割とマジで」
「……はい…」
「どうせ今日具合悪いのに任務行ったのも、他のヤツらに迷惑かけんのが嫌だったんだろ?お前のそーいうところ、ちゃんと分かってっから」


だから、もう泣くな。怒ってないから。


そう言って五条先輩は、ひどく優しい手つきで私の頭を撫でた。


いつになく優しい、五条先輩。いつもは何でもないようなことで怒鳴ったり不機嫌になったりするのに、今日はそれがない。じわりと胸に染み入る優しさが、今はなんだか痛くて。泣くなと言われているのに、私は泣き止めないでいる。


私が任務へ行かなければ、その穴を誰かが埋めなくてはならなくなる。だから、その誰かに迷惑をかけたくなかったのは本当。…でも、私が今日任務へ行った理由は、本当は少し違くて。ちょっと風邪を引いたくらいで休むなんて、と、思ってしまったのだ。これくらい大丈夫って。



だって五条先輩なら、こんな風邪くらいで弱ったりしない。


そう、思ってしまった。



結局私は、早く五条先輩に追いつきたいのだ。


先輩と後輩という絶対に埋まらない一年の差を、他の何で埋めればいいのか。


私はずっと、分からなくて。年下だからって甘やかして欲しくなくて。



そんな考えが透けて見えていそうで、嫌だ。それを分かった上で優しくされていると思うと、どうしようもなく悔しい。



「だから泣くなって。何か食う?じゃがりこあるぞ」
「いま、とてもそんな気分じゃないです」
「じゃあ、ゼリー食う?宮井が好きな桃のやつ」
「いただきます…」
「食べるんじゃねぇか」


けらけらとおかしそうに笑う五条先輩。


先輩に優しくされると劣等感をおぼえる自分もいるけど、でもそれ以上に、先輩に優しくされると嬉しくなってしまう。




結局のところ、私は五条先輩のことがどうしようもなく好きなんだろう。難しく考えずとも、つまりはそういうこと。きっと。


私がゼリーを食べる姿を慈愛のこもった目で見つめる五条先輩を見て、悔しいけれど、そう思った。

五条悟の初恋→←目が覚めると



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (178 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
746人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。