引越し ページ48
「宮井〜」
穏やかな休日の午後。私を呼ぶ五条先輩の声がしたので、荷解きをしていた手を止めてベランダへ出る。
「はい？」
「荷解き終わった？」
「いえ、まだ…」
「相変わらずトロいな。後で先輩がアイス奢ってやるから、急ピッチで頑張れよ」
「いや…そもそも、全部五条先輩の荷物じゃないですか。ちょっとは手伝ってくださいよぅ…」
「『私、収納得意なので荷解きは任せてください！』って豪語してたのはどこの誰だっけ？」
「…………」
ぐぅの音も出ないとは、まさにこのこと。
数十分前の自分の軽率な発言を後悔しつつ、びり、とガムテープを剥がしてダンボールを開けていく。今日は、五条先輩の引越しの日。そのお手伝いとして、私は現在、彼の新居でせっせと荷解きをさせられている。
数日前に家具を大方運び入れた後のマンションの一室は、何もなかった時よりもはるかに『住まい』らしくなっていた。
高専の寮から出て、一人暮らしを始める先輩。どんどん『五条先輩の部屋』らしくなっていく空間を見ていたら、少ししんみりした気持ちになった。もう夜中に突然訪ねてきて、「パジャマパーティーしようぜ」なんて言い出す五条先輩は、見ることができないのだ。
しゅんと落ち込む私を見て、五条先輩がすっと膝を折り、私の隣に座る。
「拗ねるなよ。終わったらご褒美やるから」
「ご褒美…？何ですか？」
「内緒。ほら、手ぇ動かせ〜」
終わる頃には、すっかり夕方になっていた。
練らんだに出て一息つくと、街に溢れる音が風に乗って聞こえてくる。学校のチャイム、下校途中の小学生の声、車の音。高専と違って、ここには日常の音が多い。賑やかで、心地いい。
「五条先輩…これからここで暮らすんですね」
「どーした、今さら？内見もついて来てたろ」
「何だか、五条先輩がこういう…普通の暮らしの中にいるの、いいなって」
「相変わらず詩人だねぇ」
褒めているのか、呆れているのか。軽くため息をついた五条先輩は、口元にたたえた笑みをそのままに──────私に尋ねた。
「寂しい？」と。
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…！のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…！ (2021年2月20日 13時) (
レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» ｵﾜｧ！最初から読んでいただいてありがとうございます…！続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜！続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます！続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます！続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つく | 作成日時：2021年1月16日 1時
