聞いてもいいですか ページ35
とはいえ…自分のことを「僕」と言う五条先輩を想像するのは、少し面白い。私は半笑いになりながら、五条先輩に提案してみた。
「五条先輩、一回、先生になったつもりで喋ってみてくださいよ」
「はぁ?どういうこと?」
「今より柔らかい口調で話す練習」
「何でだよ。今のままじゃダメなの?」
「言おうかどうか迷ったんですけど…怖いですよ、その喋り方。それじゃ年下はもちろん、子供にだって怖がられちゃいます。夏油先輩にも言われたでしょ」
「めんどくせぇ〜」
心底ダルそうに頭を掻く五条先輩。…と言いつつ結構ノリノリなようで、「見てろよ」と言いながらかっこよくサングラスを外し―――フッ、と微笑みながらキメ顔をした。
「僕、最強だから」
「………………」
「笑うなら声出して笑えよ。スベったみたいになんじゃん」
「ふふっ…すみません」
「てかお前、こんな胡散臭い喋り方する男の方がいいわけ?」
「五条先輩のさじ加減で胡散臭くなっちゃってるだけでしょ」
「ま、いーや。このままキャラ変すっか。落ち着いた大人の男になった俺に酔いしれる日も近いぞ。覚悟しとけ」
「また適当なことを…」
落ち着いた大人の男…とやらに五条先輩がなれるかどうか、私にはまだ分からないけれど。その時が来るのであれば、それを楽しみに待っていよう。
でも…五条先輩が「優しくてイケメンな先生」になっちゃったら、本当にモテモテになってしまいそう。だからもう少し、このままでいいですよ。…なんて、言わないけど。
その時、五条先輩がすっと手を伸ばし、私の髪に触れた。一瞬、どき、と心臓が高鳴ってしまったけど、その手はすぐに引かれ、指先には桜の花びらが摘ままれている。「ついてた」と言いながら五条先輩が宙に投げ出したそれは、風に吹かれてひらりと舞い上がっていった。
その行方をしばらくの間目で追った後、私は五条先輩に視線を移す。
「…聞いても、いいですか」
今日、先輩に聞こうと思っていたことがある。
「うん?」
「どうして、先生になろうと思ったのか。卒業したら教えてくれるって、約束しましたよね」
「―――ああ。ちゃんと覚えてるよ」
私が尋ねると、五条先輩はふわりと目を細めて笑った。
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時