桜の季節 ページ33
季節は移り変わり――――――春。
桜舞う、別れの季節。
先輩たちの卒業の日。人数が人数だから卒業式なんて壮大なものはないけれど、それでもこういう日は、ちょっとだけ特別感がある。
「お、宮井」
「家入先輩、おめでとうございます。今までお世話になりました」
「何かこれで終わり感出してるけど、これからもお世話になるだろ?」
「そうですけど、こういう区切りって大事ですから。これ、私と七海からです」
「え、花束?随分とロマンチックなことするな〜」
私が手渡した紙袋の中をちらりと見て、ありがと、と笑う家入先輩。
高専生は卒業後もここを拠点に活動する人が多いため、これでお別れと言うわけではない。それでも家入先輩がやけに嬉しそうな顔で笑うので、私はちょっとだけ泣きそうになった。
私が絶対に泣くまいと鼻をすすっている間に、家入先輩は私の手元に残ったもう一つの紙袋に視線を移していた。
「そっちは五条に?」
「はい、…家入先輩と一緒かと思ったんですけど」
「五条はたぶん、中庭かな。さっき外出てったから」
「ええ…教室行くので待っててくださいって言っといたのに…」
「照れくさいんだよ。先輩としては、こうやって面と向かって感謝を伝えられるのは結構照れるものだしね」
そういうものなんですか、と私。そういうものです、と家入先輩。
「あと、探しに来て欲しいんだよ、宮井に。さ、行った行った」
家入先輩に背中を押され、私は廊下を駆けて中庭を目指した。
高専の敷地内は独特の雰囲気があるが、今日この日だけは違った。見渡す限り満開の桜。ひらひらと落ちるピンクの花弁が太陽の光に当たってきらきらと煌めいていて、とても綺麗だ。絵葉書にしたいくらい。
そしてその中に、五条先輩がいた。珍しくサングラスを外して、桜の樹を見上げる五条先輩。光に溶けてしまいそうな銀髪が、ふわりと風に揺れる。その髪の隙間からちらちらと見える瞳は、空を映したように蒼い。
その姿は相変わらず映画俳優さながらで、近寄りがたい雰囲気をまとっていた。
――――――桜にさらされてしまいそう。
なんて言ったらきっと、「ポエムかよ」って笑われちゃうんだろうな。
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時