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泣かないから ページ31

夏油先輩の事件のことを知らされたのは、事件からしばらく経った後のことだった。



長期任務を終え、先生に報告書を出しに行った時のこと。廊下の掲示板に貼り出された、一枚の紙。自然とそれが目に留まって、立ち止まると、「退学処分」という文字が見えた。


そこに記された、夏油先輩の名前。



かなり長い間それを見つめていると、隣に人がやって来る気配がした。


…ちらりと視界に入る銀髪。五条先輩だ。




夏油先輩がどんなことをして、今どんな立場にあるのか。その紙には詳細に書き記されていた。半分まで読んだところで最後に見た夏油先輩の背中が脳裏にちらついて仕方なかったので、私は読むのをやめた。


お世話になった先輩が処分対象だなんて、とても受け入れたくなかった。でも、諦めたような顔でそれを見つめる五条先輩の姿が、これが現実なのだということを物語っている。




「…五条先輩」
「ん?」
「夏油先輩は、いつ…行っちゃったんですか」
「…二週間ぐらい前。傑と話したのは、それが最後」



どうして教えてくれなかったんですか、とは…言えなかった。



「最後に会った時さ、俺、アイツのこと殺せなかったんだよな。今まで楽しかったこととか、何か色々思い出しちまって。…ごめんな、黙ってて」



…そう、五条先輩が小さな声で言ったから。



だって、…私が思うよりもずっと、五条先輩の方が苦しいはずだから。あの時引き止められなかった後悔も、別れの寂しさも、全部―――きっと私のなんかよりも、ずっと重い。


だから私はただ首を振りながら、「いいえ…」と短く呟くことしかできなかった。




ぐっと唇を噛んで下を向いていると、我慢するはずだったのに、ぽたぽたと涙がこぼれてきてしまった。


それにいち早く気づいた五条先輩が、慰めるように私の肩を抱く。…きっと五条先輩は、言ったら私が泣くと思ったから、今日まで秘密にしといてくれたのだろう。五条先輩は、優しいから。




「泣くなよ」と頭上から降ってくる声に、私は涙でぐちゃぐちゃの顔を上げた。






「五条先輩が、泣かないから…、泣いてるんです…っ」

どこにもいくな→←彼をよろしく



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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時

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