来るな ページ20
油断した―――以外の何物でもない。
しくじった、と言った方が正しいか。
高専の結界内に降って湧いた、得体の知れない男。傑たちが天元様の元へたどり着くまで、奴をここに留めていなければならない。倒すか、せめて追い払えでもすれば万々歳だが、奴の動きがまるで読めない。呪力がまったくない―――天与呪縛か。速すぎる上に、何から何まで得体が知れない。
呪力がないから気配が読めない―――奴に巻き付いていた呪霊の気配を負うにしても、建物が邪魔だ。
「―――仕方ねぇな」
術式順転、出力最大―――「蒼」。奇襲を避けるため、周りの遮蔽物を一掃する。
これでも姿が見えねぇな…森に隠れたのか?
頭をフル回転させながら、頬に流れる汗を拭ったその時。ポケットに入れていた携帯が着信を知らせてメロディを鳴らし始めた。聴いてるこっちが照れくさくなるようなラブソング。この曲は―――アイツの。
『私も、高専に戻れるのは先輩と同じくらいですかね』
背筋にぞわっと寒気が走るのを感じた。震えそうになる手で携帯を手に取り、通話ボタンを押す。
『あ…五条先輩?今、高専に―――』
「来るな!!」
『え?』
耳に届いた弾むような声を遮るようにして叫んだ。高専に来るな。結界内に入るな。今すぐ引き返して、何でもいいから、できるだけ遠くへ逃げろ。そう必死に言い聞かせる。だが相手は少しの間困惑した様子を見せた後、「でも…」と言葉を紡ぐ。もう、入っちゃってますけど。
その声が耳に届いたのとほぼ同時に、アイツが鳥居の下をくぐって、結界の中へ姿を現してしまった。
数日ぶりに見た宮井は、滅茶苦茶になった敷地内を見て大袈裟に驚く。今こんな状況じゃなければ、再会を喜んで抱きしめていたところだが。
「バカ!!来るなって言ったろ!!」
「す、すみません…!これ、何かあったんですか…?」
「説明してる時間はねぇ!とにかく今すぐこっから逃げ―――」
宮井の背を押して外へ逃がそうとするも、どこからか飛んできた無数の蝿頭がそれを許さなかった。ざわざわと煩わしいそれらは、あっという間に俺らの周りを囲む。クソッ、これじゃアイツの位置が―――!
「――――――何だ。さっきの女もいるじゃねぇか」
不意に、至近距離で聞こえた声。ざわ、と胸がざわめく。頭の中で鳴り響く警報が、これでもかというくらいに大きな音を鳴らし始めた。
「まずはお前から殺してやるよ。嬢ちゃん」
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時