増えていく約束 ページ11
「…ほんとうですか?」
「ん。マジマジ」
「ほ…本気で聞いてるんですけど」
「こっちこそ、本気で言ってる」
卒業したら、結婚しよう。
そう五条先輩が言ったのは、冗談でも聞き間違いでもなかったみたいだ。
ええ!?と大袈裟に驚く私に、五条先輩がデコピンをした。痛みで涙を浮かべる私を見て五条先輩が呆れたように笑い、卒アルをぱたりと閉じる。
「いつになるか、分かんねぇけど。俺最強だから、すぐにお前一人ぐらい余裕で養えるようになると思うし」
まるで明日の予定を決めるみたいに、淡々と五条先輩は告げた。いつになく真剣な調子で、けれど、ひどく穏やかな声色で。
「わ…私で、いいんですか」
そう尋ねる声は、震えてしまっていた。
情けない声を出す私に、五条先輩がけらけらと笑う。そうして私の頭を撫でて、そのまま前髪をよけて額にキスを落とす。
ちゅ、と小さな音とともに離れた五条先輩は、ひどく優しい目をしていた。
「Aがいい」
ぽろ、と涙が一筋こぼれて、そのままぼろぼろと滝のように涙が溢れてしまった。
そんな私を見て、五条先輩が「泣き虫」と笑う。私が泣くのはいつだって、五条先輩のせいなのに。まったくもって、白々しい。
「や、約束ですよ」
「うん」
「ぜったい、ぜったいですからね」
「分かってる。約束な」
「はい」
五条先輩といると、どんどん約束が増えていく。
いつか、回るお寿司へ行く約束。原宿へ行って、スイーツ巡りをする約束。次は五条先輩の卒業アルバムも見せてもらう約束。全部ぜんぶ、未来のこと。
明日死んでしまうかもしれない。
全部、叶わないかもしれない。
それでも日々増えていく五条先輩との約束が、私の生きる理由になる。
「…五条先輩、今度、回るお寿司屋さんへ行きましょうよ」
「そういえば、行ってなかったな。行く約束したのに」
「はい。なので、行きましょう」
「そうだな。行くか」
どんどん増えていく約束を、これからもひとつひとつ叶えていけたら。
それは―――きっと生涯忘れない、素敵な思い出になることだろう。
「先輩、約束ですよ」
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時