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30話 ページ32

「っあ゛?!」

「今そんなこと言っていいとでも?」

「せ、性格、わっる……っ」

痛みに思わず体を丸めようとして、
ガシャガシャと手鎖を鳴らす催馬楽を見て
自分の顔が弧を描くのがわかる。

いつからこんなにも
彼女に執着するようになったのか。

同じようにそばにいるのに、
自分たちには目もくれない彼女を、
否が応でも振り向かせたくなった。

そう思ったのは。


「君の体内の呪霊は私のだからね。
思うがままに動かせる。」

「ずっ、っこい……!」

ふーっ、ふーっと息を荒らげながらも、
彼女の目は死んでいない。

昔悟が、
あいつは諦めないし挫けないし、
眩しいやつだ
なんてらしくもなく言っていたのを思い出して、
胸糞悪くなって聞いた。

「私の考えに賛同しないのは悟がいるから?」

右手は悟のカバンに忍ばせておいた
ボイスレコーダーの受信機のスイッチを押して。

「君のことも知らずに
のうのうと教師をしているあの男を?
聞けば知らないそうじゃないか。
君が彼のために黙って
ロシアに3年行っていたことも。
悟が教師をするためにその横暴を呑んだことも。」

最大音量にしているから、
今頃遠征先で悟も聞いている頃だろう。

願わくばあの男の焦燥に染まった顔が見てみたい。
絶対に自分には勝てないと思わせる、
あの銀髪の顔を。

聞かせたいことは聞かせたと思って
スイッチを切ろうとした時だった。

「はん、妙に饒舌じゃん、
そんなんで今更煽られると思ってんの?
……五条悟が教師をして、
この世界を変えるって言ってるんだから、
そりゃ従うしかないよね。」

彼女がそう呟くので、
あぁ案外家に縛られているのかと
思考をめぐらせる。

思い返せば彼女はよく、
五条の家が、催馬楽の家がと言ってい

「私は呪術師やめようと思ったし、
こんな世界クソ喰らえだと思った。
でもあの人ねぇ、眩しいんだ。
全然ぶれないし、折れないし、
当然のようにそこに立ってるんだ。
…………眩しい。
あの人がいなきゃ、
私は君に賛同してたかもね。
……でも私はあの人を信じてる」

まずい、と思った。
敵に塩を送るような真似を。

なのにスイッチを押せなかった。
彼女の意思は金剛石のように固くて、
所詮自分では叶うはずのない絆だったのだと
見せつけられるような。



欲しい。

欲しい。

日に透ける色素の薄い髪も、
ちょっとどころじゃないくらいの毒舌を
惜しげも無く披露するところも、
絶え間なくうえを眺められる所も、
悟しか見ないその瞳も。

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ワイヤー女 - 新さん» ありがとうございます!!とても励みになります!これからも是非ともよろしくお願い致します! (2020年5月25日 16時) (レス) id: cedc192f36 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - めっちゃ好きです!!全てが好きです!!更新頑張れぇぇぇぇぇ!!!!! (2020年5月25日 13時) (レス) id: e596ede8e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よく骨を折る田中 | 作成日時:2020年5月23日 18時

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