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28話 ページ30

「なんでそんなに五条のために動いてる?
分家だから?」

どうしてそんなに頑張るの、
いい術式もあるのにと言う夏油くんと硝子に、
私が五条さんのためだと応えると、
彼らは揃って変な顔をした。

前述の問に私がううん、
と応えると余計渋い顔になる2人。

「好きなの?」

「まさか」

で、ですよね〜
と笑うふたりに、
なんなんだと言葉を返して。

「そんなんじゃないよ」

そう笑って私はふたりに手を振って歩き出す。



幼い頃は絶対仕えてなんかやらない。
なんて思っていたあの銀髪を思い返す。

不器用なのかなんなのか、
とにかく呪力のだしかが下手だっただけで、
私はその馬鹿みたいに呪力を消費する術式を、
脳で理解し、身体で扱えるようになった。

「偶然手に入れた力を我が物顔で使う」

見るだけで力が手に入る巻物。

そんな認識が広まったせいで、
少し出来るやつも出来ない奴も、
運だけは良い奴。
そんな目で私を見てた。

当然驕ってなんかいなかったし、
自分の力じゃない。
その気持ちは私にもあった。

自分で自分の価値を作ってやる。

そう思ったのはいつからか。
寝る間も惜しんで
私は術式を作り出すことに専心した。



そうして、催馬楽Aの力を手に入れた。

冗談でしょ、
と言わんばかりにクルクル返る掌。

誇りだ。
立派だ。
五条悟の近臣に相応しい。
それに巻物に選ばれた力を持っている。

ふざけんなと叫びたかった。

数年前の自分たちの行動を振り返れと。
私に対する態度はそんなものじゃなかっただろと。

あの日のことさえも、
みんな死んだあの日でさえも、
あれは英断だったと誰かが言った。

気づいたら殴ってた。
屍の上に今の自分の力があるなんて、
冗談でも信じたくない。

それから期待されることが増えた。

天才だ。
次は何を作り出す?
次は。次は。
これが出来たならあれもできるだろう。
無遠慮な期待。

抱え込もうと私に賄賂を流してくる人もいた。
催馬楽は別に上の位じゃないから、
養子に来ないかと。そういう人も。
中には、
あの時亡くなった子達の親もいた。



やめようと思った。
もうやめよう。




できるのも。できないのも。
できない方が、
数倍楽だった。




「うるせぇ」

「天才に指図すんなよな」

馬鹿だ。
馬鹿みたいに真っ直ぐで。
馬鹿みたいに自信があって。

私は、あの人に。救われた気がして。





だから、好きなんかじゃない。
だから私は、
あの人のために何かしたい。

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ワイヤー女 - 新さん» ありがとうございます!!とても励みになります!これからも是非ともよろしくお願い致します! (2020年5月25日 16時) (レス) id: cedc192f36 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - めっちゃ好きです!!全てが好きです!!更新頑張れぇぇぇぇぇ!!!!! (2020年5月25日 13時) (レス) id: e596ede8e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よく骨を折る田中 | 作成日時:2020年5月23日 18時

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