風味絶佳 (ページ9)

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まだ眠い目をこすって登校すると、昨日より鮮明にバスケットボールの音が聞こえてほんの少しだけ耳を澄ませてしまう。

何人かでしてるのかな、パス！やシュート！というスポーツ特有の単語が聞こえる。

いつも通り体育館の前を通って花壇まで歩いていると、ボールを取りに開け放たれたドアの近くまできたクォンくんと目が合う。

あ、と思ったのも束の間、またあの太陽みたいな笑顔で「ソラちゃん、おはよう！」って言ってくれた。

「クォンくん、おはよう。」

朝から二つの太陽に見つめられたことでじわり、と汗が滲む。この人は月明かりですらもこんな笑顔で笑うのだろうか、少し気になる。

すぐに考え事をしてしまうのは私の悪い癖で、可愛らしく首傾げたクォンくんがボールを抱えながら不思議そうにこっちを見ている。

「練習、頑張ってね」

そう伝えるとおう！と目一杯のグーサインで応えてくれた。
男の子に言うのはふさわしくないけど、寝癖のついたままの髪や、少し膨らんだ頬につぶらな瞳。

それがものすごく可愛らしくて微笑みを落とすと、クォンくんはまあ不思議そうにしながら練習に戻っていった。