風味絶佳 (ページ34)

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その日から、ジフンさんは殆ど毎日のようにお店に顔を出してくれた。事務所が近いから、とは言うものの、忙しい中で時間を作ってくれているのは明らかだった。
‥‥‥まるで、私がどこかに行っていないか、不安だ、とでもいうように。

急ぎ足でご飯を食べていくこともあれば、はたまた本当に挨拶だけするような日も。

「お前の、ソラの顔見にきただけだから。」

むずがゆくなるようなその言葉をおじいちゃんが冷やかすと、実はさ、とジフンさんが話し出す。

「もうすぐカムバだから、また暫く来れなくなるんだ。だから、来れるうちに、と思って。」

そうなんですね、と眉を下げると、いつでも連絡して、とIDの書かれた紙を握らされる。

ちょっと、と言う暇もなく、仕事に向かうのであろう、車に乗り込んで帰ってしまった。

もらって、追加まではしたものの、わざわざ送るような言葉がない。元々口数の多い方じゃないし、彼の忙しい時間を1秒でも貰うわけにはいかない、トーク画面は開かないようにしていた。

会わないうちに、目を凝らしてみると、マートやコンビニ、いろんなところで彼の姿を見つけることができて、本当にすごい人なんだな、なんて他人事のように感心する、もちろん他人なんだけど。

「ソラちゃん最近元気ないわね、小人くんのせい？」

そうミニョンさんに聞かれて、素直に、はい、と答えてみる。

「てことは、好きなの？小人くんのこと。」

獲物を見つけたように目をキラキラさせるミニョンさんに、もう、と言いながら、好きみたいです、と呟くと、その言葉は意外にもすとん、と胸に落ちた。