風味絶佳 (ページ27)

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送ってくれたお礼にコーヒーでも、とのお誘いを受けてくれたジフンさんと共にお店の中に入る。運転手さんには丁重にお断りされた挙句、お店はガラ空き。なんだか2人きり、というのが落ち着かず、バタバタと頼まれてもいない拭き掃除なんて始めてしまう。

「雪、本格的に積もってきましたね。」

「そうだな。」

「ジフンさんは車運転しないんですか？」

「うん。俺免許持ってないし。」

「あ、そうなんですね、」

「カートライダーなら上手いんだけど。」

そう言ってニヤリ、と私の好きなしたり顔で笑うジフンさんに、カートライダーってなんですか、と聞く。
まさかジェネレーションギャップ、かと思ったが、小さい時に流行ったゲームらしい。そりゃあ通りで知らないわけだ。

遭難しなくて良かったな、世間知らずさん。なんて私を揶揄うジフンさんに、何歳だと思ってるんですか、と言い返す。

「俺、96年生まれだけど。多分あんたより歳上。」

「……嘘。私、98年です。てっきり歳下かと」

「前、話してるの盗み聞きしたから知ってる。多分俺のこと歳下だと思ってるんだろうなって。」

あ、まただ。またそのニヤリ顔。
まさか歳上だっただなんて、すみません、と謝ると、ジフンさんからのお達しが。

「ジフンオッパ。そう呼んでくれるなら、許してやってもいい……。」

「……オッパだなんて。そんな、お客さんに。」

「ただのお客さん、よりは親しいつもりだったんだけど？」

なぜこの人はこうも、私が照れるセリフばかり口にするのだろうか。余裕そうな表情になんだか悔しくなって、絞り出した、ジフンオッパ、という言葉。

じんわり、彼の耳が赤く染まる過程は、見なかった事にしておこう。