風味絶佳 (ページ13)

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「ソラ、傘持ってきた？」

牛乳を飲みながら私に尋ねるジヨンに、傘？なんで？と聞くと知らないの、今日午後から嵐なんだよ、と言われる。

「知らなかった、結構すごいやつ？」

「うん、ほらみてこれ風速予想」

そう言って見せてくれた画面には赤い警報レーダーがでていて、やってしまったなと思う。ソラ、意外と抜けてるもんね〜などと笑うジヨンを横目にため息をつく。

「送って行ってあげたいんだけど、私今日バイトだから急いで帰んないとなの〜大丈夫？」

「うん、私もちょっとやる事あるし、！バイト頑張ってね〜」

予想通り、午後から雨嵐は強くなり、もしかしたら電車が止まるかもって、短縮授業になるみたい。なんだかちょっとラッキー。

早く帰りなよ！と雨の中叫ぶジヨンとお別れして、向かうのは私のオアシス、体育館横の花壇。風避けのビニールや重石、結束バンドを顧問に貰って雨嵐の中作業していく。

帰りに羽織ろうとセーターを脱いだもんだから、少し、いやかなり肌寒いが、愛情込めた花たちが無惨に散るよりは全然マシだ。

うう、と寒さに身を捩ると、自分の真上だけ雨が止んだことに気づく。不思議に思い上を見上げると、透明のビニール傘で覆われた自分を、スニョンくんが複雑そうな顔で見ている。

「スニョンくん？どうして、」

「ソラちゃん、何やってんの。」

「？何って、嵐が来るから、風避けにビニールを、と思って……。」

少しだけ苛立ったようなスニョンくんの口調に、動揺して返事がしどろもどろになる。

「ソラちゃん。風邪ひいちゃうから、」

黙ったままのスニョンくんを変に思い、ぬかるんだ土の上に立ち上がる。

「だから、俺にも手伝わせて。」

スニョンくんはそう言って、ブレザーを私の肩にかけると傘をほっぽって、何したらいい？と私に笑いかける。

戸惑って立ち尽くす私に、スニョンくんが続けて言う。

「ほら早く〜。明日の朝悲しい思いするのも嫌だし、ソラちゃんが風邪ひくのも嫌なの。だから早く終わらせて一緒に帰ろうぜ！」

雨で視界は曇ってるはずなのに、スニョンくんの周りだけがキラキラと輝いて見える、私は重症なのだろうか。

「ありがとう、スニョンくん」

陽だまりのような笑顔で微笑むスニョンくんに手伝いをお願いして、花を潰さないようにふんわりとビニールをかけていく。雨で潰れないように、小さく穴を開けて重石を積めば、大丈夫、なはず。