やすだ短編

サンカク 2 ページ22

(サンカク 続き やすば)

毎日幸せな日々で、突き放されたのは突然だった。

「もう、別れよ。俺には関わらんといてよ」

初めは何かのドッキリかと思った、なんて言いたかったけど彼の態度で俺に冷めてるのは薄々分かっていた。でも、俺はまだこんなにも好きなのに。





「お願い。急すぎて、わからんから。
ちゃんと話してや。」





話を全く聞いてくれない彼の腕を掴む。
涙がボロボロと溢れると、それに気づいた彼が
顔を歪めてはぁ、とため息をついた。


「女が好きなんや」



彼の一言は俺の心をズタボロにするには
十分すぎた。



「すばるくん最低っ…！！
俺のこと好きにさせて、そのくせ自分から捨てて！！無責任やっ…！！」


俺はそう吐き捨てて彼とお揃いの指輪を彼に投げつけて泣きながら走って帰った。



虚しかった。
冷めたとか、好きな人が出来たとかではなく、
女が好き。
俺が絶対手に入らないもの。
一生手に入らないもの。
性別を超えても愛し合えると思っていた自分を
殺したのは間違いなく彼。
嫌い、最低、無責任。
出てくる罵りの言葉は沢山あるのに。





「……………好きやった。すばるくんっ………」









(すばるside)







仕方なかった。
共通の友達から俺らの事を思って言ってくれた言葉。

「すばるはさ、ヤスを抱く側やから別にいつでも女に切り替えられるかもしれんけどさ。
ヤス、このままやったら男にしか抱かれん体になるで？」




その心配はもちろん。性別なんて関係ない、ってずっと思い込んでたフリをしていたけど。



ヤスには幸せになって欲しい。
家族が欲しい。子供が大好きな彼を俺のわがままで壊してしまうわけにはいかない。
沢山泣いて、沢山考えて、別れるしかないって。



いざあいつの泣き顔見たら、
悔しくて悲しくて性別なんて作った神様に恨みしかわかなかったけど。


お揃いでかった、指輪を投げつけられた。
結婚指輪の、つもりだったもの。



帰っていった彼を思って人生で1番泣いた。
でもこれで良かったんだと。
今はこれでも何十年後かにはあの時こうして良かった、って心から思える日が来ると。




でも。



「……大好きやったのにっ……！」




涙が枯れるほど止まらなくて。
貴方との思い出は俺の頭の中全部だったから。
もう全部空っぽになってしまった。
だったら初めから付き合わなければよかったのに。







終

また続き書くかもです

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