愛惜(プロシュート) ページ9
凡庸な暗殺者だった、と思う。スタンドを持っていたという事実を知っていても、あの女はその一言に尽きた。殺すのに躊躇い手が震え、いちいちオレがフォローに回らなければならないようなマンモーナではなかったが、かといって心を殺して平気で手を汚せるようなヤツでもなかった。スタンドだって暗殺向きじゃあない。物体を水に変える能力だったかなんだか。アイツ自身は後始末が大変なもんであまり使おうとしてなかったっけな。……
だが、暗殺チームの中では誰よりも人間らしくって、素の状態だと、本当によく笑いよく泣くヤツだった。そんなAが死んだのは、単純に。
「本当に馬鹿だぜ、まさか一人でボスを裏切るなんてよォ……」
ヤツは行動を実行に移すのが早すぎたんだろう。
手元の煙草にライターで火をつけると、オレはみすぼらしい墓を見下ろした。いつの間にか苔が生え、墓石に傷ができ、そこら中に雑草が伸びていた。最後に来てから一ヶ月しか経っていないのに、劣化は随分と早かった。そんな石ころの下に、Aは眠っている。
「プロシュート、やはり此処に居たのか」
かけられた声に、顔を上げ辺りを見回す。すると風景の一部に擬態していたらしいリゾットが近づいて来ているのがわかった。珍しく、リゾットは黒いスーツ姿だった。その手には花束がある。
「リゾットか。今日のオレはフリーじゃあなかったのか」
「上から任務が入ったんだ。明日の朝までに依頼をこなせ、と。プロシュート、これは今、空いているおまえにしか出来ないことだ」
「……そうか。わかった、そういうことならオレが受ける。どうせ拒否権なんてねェんだろ?」
「……察しの通りだ」
「だろうな」
返事を返すと、オレは墓に向かって「行ってくる」と告げた。リゾットが訝しげな表情でこちらを見ていたが、なに、気にすることでもなんでもねえ。帽子を被り、くるりと身を翻し立ち去る。
明るく笑っていたアイツはもう死んだ。オレは仲間の死から立ち直らなければならない。昔の仲間のことを気にするなんて、オレらしくもない。そう思いながらもAのことが頭から離れないのは、少なからず、オレがアイツに惹かれていたということなのかもしれない。
それにしても、アイツの作った料理は下手なリストランテより遥かに美味かったように思う。あの味が二度と口にできないことが、惜しかった。
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とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます! (2017年12月12日 21時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…!更新がんばって下さい! (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます! いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください! (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます!更新頑張ってください!応援してます!他の作品も楽しみです!! (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とある決闘者 | 作成日時:2017年12月10日 22時