想いは不可逆的に（蒙恬） ページ10
※アンバランスな午後の後日談
読み物をしていると、Aに来客だと使用人が伝えに来た。
それも庭で待っていると。
勝手に場所を指定してくる人は一人しかいない。
Aは足を速めた。
「あれ？そっかもう菖蒲が咲く頃か。」
頬をかすめる薫風に蒙恬は顔を綻ばせる。
一人で呟くと後ろから声がした。
『お待たせ。』
蒙恬はさらに夏の始まりを楽しみたいのか、少し散策しない？とAの手をとった。
「元気だった？酷いなぁ。あれから一度も会いにきてくれないなんて。」
『ええ、元気よ。酷いわよね。何も言わずに戦へ赴いていたなんて。』
「あれ、聞いてた？急に楽華に指令が下ってさ、小さな前線だったからすぐに戻れるかと思ったんだけど、平定させるのにちょっと手間取ったかな。」
繋がれた手へちらりと目を向ければ白い手に生々しく残る傷跡。
「使用人にAは屋敷に来なかったか聞いても良い返事ではなかったし。傷心したよ、俺。」
『もう…それよりも何も言わず戦へ行くことは止めてほしいわ。』
傷跡の残る手を細い指がなぞる。
「うん、ごめん。余計に心配させたね。」
蒙恬は両腕でふわっと包み込みながらAの首元に顔を埋め深く息を吸い込む。
「死ぬほど急いで帰ってきた。早く会いたくて。」
『お疲れ様、ご無事で何よりでした。』
Aは茶色い柔らかな髪を持つ頭へ優しく手を置いた。
―――
「そういえばさ、いつから？いつから俺のこと…」
『ふふ…あの蒙恬が私の気持ちに全く気付かなかったなんて笑っちゃうわね。』
「そのことに関しては一生の不覚だよ。
でも…知らないとはいえ不快な思いさせていたね。」
『女性の話ばかりだったものね。
いいの、結局は私のところに帰ってきてくれてたから。』
「……あーもうなんでそんなこと言うかな。
もう戻れないよ、二度と元の関係には戻れない。離す気もないからね。」
『あなたもその女癖、改めてよね。』
「仰せのままに。」
暑くなるまでにもう少しAとの距離を近づけてみせるよ。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
