翻弄されたのは�◆焚�賁） ページ5
ーーー
『ねぇ、槍先が曲がって見えたんだけど、アレどうやってやるの？』
『今朝の蓮の花がとても綺麗だったの見た？』
『はい、どうぞ手拭い。』
あれからAはたびたび王賁を訪ねてくる。
何度帰れと言われても、近くまで来ただの顔を見にきただけだの、捉えどころのない返答ばかりだった。
「そもそも何故毎度、門から通される。」
『塀をよじ登って入るのも…』
「そのような意味ではない。」
聞けば、王賁の顔馴染みだと言えば通してくれたのが始まり、社交的なAの性格が高じて今では賁様のご友人、と従者たちに広く知れ渡っていたということだった。
「どこぞの誰かと同じ部類ではないか。」
『どこぞの誰って？でも顔馴染みっていうのは嘘ではないでしょう？』
Aが来ると調子が狂うと気付いた王賁は不機嫌そうに眉を潜めた。
ーーー
『それでね、その後なんて言ったと思う？』
「さあな。」
『あ、指を怪我してる。これぐらいなら私でも手当て出来るよ。』
「いらぬ世話だ。」
Aは自分の親のこと、友人のことなど面白おかしく話したり、手当てをしながら手の豆を数えたりした。
番陽は時々Aの態度を諫めたが、鍛錬後の光景は王賁や従者たちにとっていつしか珍しくないものとなっていた。
『はぁーすっかり寒くなったね。私寒いの苦手なんだ。』
ーーー
季節は流れ、Aが王賁の屋敷に通い詰めてから二度目の夏。
『王賁、あのね………そういえば今年も蓮の花が咲いたよ。見た？』
「ああ。」
『あのね、王賁…あぁやっぱりいいや。』
静まり返った鍛錬場で小さく響く。
「煮え切らぬ物言いでなんだ先程から。いつも父の歯切れが悪く弟子が困っていると息巻いていたのはお前だぞ。似た者同士ではないか。」
『はは…そうかもね。それよりも…そんな取るに足らない前の話を覚えていてくれたの？』
「嫌でも毎度聞かされている。」
『そっか。』
Aは一度俯き、吹っ切れたように王賁を目に捉えた。
『私ね、初めて王賁の槍術を見た時に目が離せなかったんだ。荒々しい中にもなんかこう…美しさみたいなものがあって。見とれてたんだと思う。』
「…何が言いたい。」
『何でもないよ。ただ言いたかっただけ。じゃあね。』
それ以来、Aは王賁を訪ねてこなかった。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
