密約（蒙恬） ページ13
「雨が降りそうだな。」
先程より色の濃くなった曇天を見上げた蒙恬は買い物のついでに街をぶらついていた。
すると前方から慌ただしく走ってきた女性に気付く。
何事かとそう思った矢先、ちょっと匿って下さい！と言われ背中に回り込まれた。
「… こっち！」
一瞬たじろぎながらも、女性に泣きつかれては男がすたるとの思いから彼女の手を掴み走り出す。
お待ち下され〜！と従者らしき者の声が後方で聞こえるが似たような状況を経験する蒙恬にとって、何かピンとくるものがあったのだ。
町外れにある橋のたもとから川辺に降り彼女を座らせる。
ここならじきに降りそうな雨も凌げるだろうと。
息を整えた彼女はお礼を言った。
『ありがとうございました。Aと申します。』
どこぞの御令嬢のような雰囲気を持った彼女は、頭を垂れた後に乱れた髪や上等な衣の裾を白い手で直す。
その姿がひどく艶めかしく感じられた。
「俺は蒙恬だ。えーっと訳あり？だよねどう見ても。」
『蒙恬様…あの蒙家のご嫡男の。』
「あは、知ってるんだ嬉しいなー。」
おどける蒙恬に対し、少し記憶を辿らせた。
父が推すお見合い相手の一人に蒙家の名があったことを伝える。
今日も見合い相手と顔を合わせたが両家の親、相手の男性共にお互いをたいそう気に入り、とんとん拍子に話が進んでいた。
Aだけは取り残して。
気持ちがついていかず、いたたまれなくなり気分が悪くなったと称して逃げるようにその場を後にした。
『でも良縁だとわかっているのです。もう逃げられないとも。』
「最後の悪あがきってやつ？」
『今まで好き勝手してしまい破談にさせた話も少なくありません。でもそろそろ限界かと…』
「はは…見かけによらずお転婆だね。」
しかし悲しそうに笑うAを見て不謹慎にも綺麗だと素直にそう思った。
蒙恬は誤魔化すように視線を空へ見やる。
「とうとう降ってきたな。」
橋の下から降る雨を見ながら、蒙恬も何度も抜け出したことのある見合いの話をした。
『私たちが顔を合わせていたら、どちらが先に抜け出したでしょうね。』
「こうして一緒に逃げてもいいけど？」
もしも、の例え話なんて意味のないことはわかっている。
しかし蒙恬は嫌がらず、面倒な素振りも見せずにAの話へ耳を傾けて向き合った。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
