不意を突く顔（蒙恬） ページ2
起床と同時に従者たちが身の回りの世話をする。
髪を結われ豪華な簪をつけ、煌びやかな衣を身にまとえば何も言わなくても出てくるこれまた豪華な食事。
朝からそんなに食べられない、と手をつけないこともあった。
今ではそんな自分を恨めしく思う。
それは当たり前の日々が、当たり前でなくなってからだ。
名のある貴族だったAだがそれは少し前の話。
居住していた街の城が攻め滅ぼされた。
抵抗した父母も捕らえられ恐らくこの世にもういない。
Aを逃すための抵抗だったと従者に聞かされた頃に運良く城外に来られたが、矢傷を負いながらAを逃した最後の従者も首都咸陽を目前にして息耐えた。
別邸がある咸陽に辿り着いたのはA一人。
一家は離散、財産や領地も奪い取られAに残るのはその別邸と没落した元貴族、という肩書きであった。
別邸ではAの父が咸陽に赴いた際に利用していた。屋敷と呼ぶには程遠いが、一人でいるには広すぎる。
これ幸いか、従者が持ち出した荷の中に高価な玉(ギョク)のついた簪や耳飾りが入っていたので売り捌けば多少の間の食い扶持も得られる。
問題はその後だ。
蝶よ花よと育てられたAがこれから一人でどうやって生きていくのか。
先行きの不透明な人生はどん底にまで落ちていた。
「ちょっ！ちょっと！君どうしたの？」
また一つ装飾品を手放した日の帰り道、心配そうな顔をした青年はAに話しかけた。
ーーー
父の遣いで昌平君への所用を済ませた後、蒙恬は街を遊歩していた。
今日は気候も良く、側近のじィも従者もいない。
早々に帰るには惜しい条件だ。
時々女性に声をかけられては足を止め話に花が咲く。
これが戦がない時の彼の日常である。
が、ふいに非日常なものを感じた。
その正体は今蒙恬の眼前を力のない足取りで行く彼女か。
悲哀に満ちた顔でもなく、もちろん怒気を含んだ顔でもない。
身はこの世にあるのに心はこの世にいないような顔。
焦燥感に駆られた蒙恬は思わず声をかけていた。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
