113 プルコギ【JK】 ページ13
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インターホンを押そうとして、一度その手を引っ込めて、そして勢いに任せて押した。
中から物音が聞こえてきて、ヌナが急いで玄関に向かっていることが分かる。
それにすらも心臓がきしりと痛む。
恐る恐る扉が開かれて、その隙間から覗くのは愛おしい人。
「お疲れ様」
そんな何気ない一言ですら今では特別に感じる。
ヌナに告げていた時間よりも大幅に遅れたからだろう。「撮影長引いたの?」と聞かれたけれど、そういうわけではないから素直に答えた。
きっとそんな俺の態度に何か違和感を覚えたんだと思う。
俺に気を遣うかのようなヌナの態度にむしゃくしゃして。
そして、テヒョンイヒョンじゃない、俺なんかのために料理を作っていてくれたことに、喉の奥がきつく締め付けられた。
無自覚なの?
そういうところだよ。
期待させて、突き落とす。
それがどれだけ残酷なことなのかを全く分かっていなさそうなところに、心の底から腹が立った。
もう、テヒョンイヒョンのものなのに。
俺のものなんかじゃないのに。
………そんなもの作るなよ。
視線の先に映るのは、いつだったか俺が特別好きだと言ったヌナのプルコギ。
ヌナは料理上手で、ヌナが作ってくれるものはなんでもおいしかったけれど、その中でも俺はプルコギが一番好きだった。
俺も気が向いたときに料理をすることはたまにあって。プルコギは簡単だからよく作ったけれど、ヌナが作ってくれるものには到底及ばなかった。
けれど今それを口にしてしまえば、込み上げてくるであろう感情が簡単に想像できた。
とてもじゃないけど食べられるはずがなかった。けれど、はっきりいらないと言える勇気もなくて。
そんな思いから、「今はいい。後にする」と言った俺に、ヌナは少し黙って、まるで傷付いたかのような表情を一瞬見せたから。
心がぐしゃぐしゃになった。
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ヌナにはもういるでしょ。
ヌナの料理を喜んで食べてくれる人が。
どうして俺が一番好きだって言った料理を作るの?
ヌナはあんまりプルコギ好きじゃないって言ってたじゃん。
それを食べるのはいつも俺だけで。
俺のためだけに作ってくれてた、そんなものを。
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どうして、そんなに傷付いた顔をするんだよ。
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uk(プロフ) - 何度泣いたか分かりません・・・切ないです。。お休み中とのことでしたのでいつか公開されるのを待っています。素敵なお話をありがとうございます! (2020年10月7日 22時) (レス) id: 7eeed36c19 (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - hさん» hさんコメントありがとうございます!そんなに感情移入して頂いてるなんてこれ以上ないぐらい嬉しいです( ; ; )笑 拙い文章ですがそう言って頂けてもう涙涙です…決めてた結末に向けて頑張って書いていきますね!ありがとうございました(*^^*) (2020年6月3日 13時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - Kumiさん» Kumiさんいつもコメントありがとうございます!うわんなんて嬉しいお言葉…どっちとくっついても悔いがないなんて嬉しいです( ; ; )頑張って更新していきます! (2020年6月3日 13時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - 夏さん» 夏さんいつもコメントありがとうございます(*^^*)不器用なグクに素直になってほしいものです…!次で完結ですので是非最後でお付き合い頂ければ嬉しいです! (2020年6月3日 13時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - mgnさん» さすがすぎて何も言えませんが一言、愛してますとだけ伝えときます (2020年6月3日 13時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナノカ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年5月7日 12時