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私、ジョングクがこんなに泣いてるの初めて見たかも。
そんな呑気な考えが頭をよぎる。
だってもうなにも考えられない。
考えてしまったら、私きっとジョングクの手を掴んでしまう。
それは彼を地獄に連れて行ってしまうようなもの。
そんなこと、出来るはずがなくて。
世界で一番大切な私の宝物。
彼と出会えたことが私の人生で一番の幸運だとそう断言できる。
そんな大切な彼を私のために危険に晒すなんて出来るはずがない。
この城から2人で逃げて幸せに暮らすなんて、そんな夢みたいなこと叶うはずはなくて。
きっとどこかで捕まってしまう。
そしたら私達はきっと一生会えなくなってしまう。
そんなことはもうとっくに分かっていたから。
だけど、彼のために泣いている彼の手を振り払うこと。
たったそれだけのことが私には出来なくて。
泣いている彼の背中に手を回して、私も彼を強く強く抱きしめる。
「……ジョングク」
大切な、ジョングク。
「………ジョングク」
いつだって世界で一番幸せでいてほしい。
「……………ジョングク」
抱きしめている愛おしい彼の名前を何度も、何度も呼んだ。
溢れてくる涙は止まることを知らない。
まだ私のそばにいる。
そう確認したかっただけなのに。
彼の名前を呼ぶたびに頭に思い浮かんできたのは、彼と過ごしてきた今までのたくさんの記憶。
蜂蜜が溢れるような笑顔で姫様と私を呼ぶ姿。ちょっと生意気に私をからかうところ。拗ねた表情も寝起きのぼんやりした顔も、私を愛おしそうに見つめるあの優しい表情も。
どんなに足掻いても手放せるわけがなかった。
私の全て。
ジョングクは、私の生きる意味だった。
「…………ジョングク、助けて…っ…」
彼と2人で生きていけるかもしれない。
そんな僅かな望みにすがってしまう勝手な私を許してくれなくていい。
あなたと一緒にいられるのなら、そこが例え地獄だってなんだっていいの。
だから、神様お願い。
どうか彼と一緒にいさせてください。
飽きることなく溢れ続ける涙を、ジョングクは私の身体ごと抱きしめてくれた。
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作者名：ナノカ
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月31日 19時
