あの時 ページ4
４年前。
三門市で起こった大規模侵攻。
まだ中学生だった私と小学生の弟は、ちょうど我が家で留守番をしていた。
２人で宿題を片付け、夕ご飯を楽しみに待つ日常。
そんな日常は、聞いたこともない爆発音であっけなく断たれる。
耳を塞いでもどうにかなってしまいそうな程の大音量。
何事かと外に出てみると、見たことのないロボットとも何とも言い表せない物体。その物体によって壊されていく建物。幾分か前に公開されていた映画の様だ、と固まりかけた頭がぼんやり感じた。
「ひｯｯ…」
何のためらいもなく次々と踏まれてゆく私たちの生活していた街。我が家に到達するのも、時間の問題だと悟った。
こちらへ向かい、お年寄りや幼児に構うことなく無我夢中で逃げ惑う人々、崩れ落ちてゆくビルや家はもう元の形が分からない。
恐怖のあまり涙も出ないし、足も動かない。
喉がきつく詰まる感覚を覚え、声も出ない。
どうして緊急事態に人間はうまく動かないのだろうか。
顔を引きつらせ、大粒の涙をためる小さな弟。
まだ、ランドセルを背負い楽しそうに毎日学校へ出向く歳。その小さな体が、震えだす。
「っ……逃げるよｯｯ！！」
大事な家族を、可愛らしい笑顔で笑う弟を、失いたくない。
震える手で抱き上げ、弟のフードを被せて視界を遮る。
この目も当てられないような、自分の身の保証だけを願い逃げ惑う光景を、幼いながら閉ざしたかった。
情けなどかける余裕もなく罵倒を浴びせ逃げる大人たちに、崩れる家屋の下敷きになる人。
あちらこちらで崩壊音とは言えない生々しい音さえも聞こえてきて、吐き気を催した。
誰も、何も助けてくれない。
自分の命を、身を、守る余裕すらも失われかけている。
そんな光景は、弟にも、もちろん、私にだって、刺激が強すぎた。目を当てられるものじゃ、なかった。
すくむ足を奮い立たせ、無我夢中で走る。少しでも遠くへ、少しでも安全な場所へ
あぁ、私だって助けない大人達と一緒なんだ、と自分自身に酷く絶望しながらも、手にした小さな体だけは離せなくて、足を止めることはなかった。
息を吸う事もままならない呼吸に、悲鳴をあげる足。
こんなに体は限界なのに、足は止まらない。
子供ながらに、ちゃちな使命感でもあったのかもしれないと、今になっては思えた。
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ぐりーん@Umi(プロフ) - 黒崎ソラさん» ありがとうございます！頑張らせて頂きます〜！ (2016年9月14日 7時) (
レス) id: 969dfe5434 (このIDを非表示/違反報告)
黒崎ソラ - 面白かったです！更新頑張ってください！ (2016年9月12日 4時) (レス) id: b15a705d85 (このIDを非表示/違反報告)
ぐりーん@Umi(プロフ) - 蜜柑雨さん» わぁぁお褒めの言葉ありがとうございます！！更新頑張らせて頂きます♪ (2016年9月11日 11時) (レス) id: 969dfe5434 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑雨(プロフ) - とっても面白買ったです！！ほのぼの感が最高です！更新楽しみにしてます！ (2016年9月11日 1時) (レス) id: 94c773db22 (このIDを非表示/違反報告)
ぐりーん@Umi(プロフ) - setunaさん» わわ、勿体無いお言葉を！！嬉しい限りですありがとうございます(*´ω`*) 18歳組可愛いですよね！頑張らせて頂きます♪ (2016年9月10日 22時) (レス) id: 969dfe5434 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：み
| 作成日時：2016年8月17日 15時
