４３. 終戦 ページ43
翔side
色々聞くことがあったのに、俺も付き添いたかったのに松岡って人に智くんを連れて行かれた。
俺はもっと上手い人たちがやるように結界を維持したまま戦いに参加出来なかったことが悔しかった。
何で智くんが倒れたのか分からなかったけどもっと俺が強かったらこんなことにはならなかったんじゃないかって思ってしまう。
…悔しい
悔しくて悔しくてたまらなかったけど、その思いは、一旦無理矢理胸に仕舞い込む。
避難してきた子達を送る前に俺は家に結界を掛け直した。
智くんが皆んなを守る為に掛けてくれてた結界…同じようにまた、誰かを守ってくれるかもしれないから…使わないことを願って丁寧に掛け直す。
そして、避難してきた子達の家へ歩き出した。
歩き出してすぐ、後ろを歩いている和と雅紀が何か話してるのが聞こえるが俺の頭の中は智くんでいっぱいだった。
だが…いくら頭がいっぱいでも、前から感じる小さい頃から嫌というほど感じてきた魔物の気配だけは無視出来なかった。
翔「…雅紀」
雅「うん、俺やるよ」
翔「いや、俺がやる。ちょっとこっち任せるよ」
雅「分かった」
俺は腰に差していた刀を抜いて魔物に斬りかかる。心臓を突くのではなく、一気に刀に異能を纏わせ肩から斬り下ろし、心臓を破壊した。
全員送り届けるまでに出会った魔物はその一匹だけで、無事全員送り届けた。
和「翔さん、先にリーダーの方向かって。俺はこの人何とかしてから行く」
すぐに智くんのもとに向かおうと歩き出すと後ろから和が俺と同じように歩き出そうとした雅紀の袖を引っ張って言う。
雅「えっ？何でよ？」
和「怪我人ゼロって自分はどうなのよ」
雅「えっ…」
和「ズボンが黒いから目立ってないだけで結構血出てるくせに」
潤「怪我してたの？」
雅「ただのかすり傷だから大丈夫」
潤「…じゃ見せて」
和「ほら、ズボン捲って」
2人に問い詰められ、はぁとため息をついた雅紀はそっとズボンを捲った。
和「…ほら」
潤「っ！酷い怪我だよ…これ」
魔物の攻撃を受けたのだろう。膝下から足首にかけて長く深く抉れた傷が現れた。
周りも暗くて気付かなかったが雅紀のズボンや靴は血まみれだった。
雅「大丈夫だよこれくらい。…あーあ隠したかったのに。翔ちゃん先行ってリーダーにはバレたくないから」
翔「分かった」
和「潤くんもこっちくるよね？」
潤「ん？うん」
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作者名：紀衣 | 作成日時：2021年1月11日 21時
