Ability I (ページ3)

今日:20 hit、昨日:2 hit、合計:59,354 hit

　３. 熱ページ3

水を飲み、もう一度寝ようと思ったがだんだん体調が悪くなっていく上に何度見ても慣れない死の感覚を感じほとんど眠る事なく朝を迎えた。

「智、朝よ。起きてー」

階段の下から母さんの声が聞こえるが絶対に熱があるし頭も痛い。返事をするのも億劫で母さんの声を締め出すよう頭から布団を被る。

「智！起きないの？本当に遅刻するわよ」

と大声で言いながら部屋に入ってきた母さんだったが僕の様子を見ると急に静かになり

「久しぶりに風邪でも引いた？」

と聞きながら布団をそっとまくり額に手を当てる。

「うん、熱あるね。大丈夫？」

「…しんどい…頭痛い…」

「風邪だね。ちょっと待ってて体温計取ってくる」

有無を言わせず体温計を突っ込まれる。

「38.5度かぁ結構あるね。後で病院行こっか」

「…寝てたら治るからいい」

「本当に？行こうよ」

「…行かない」

「はぁ…分かった。でも、明日も熱があったら病院行くからね。今日はゆっくり寝てなさい」

「…分かった」

「何かあったら呼んでね」

と言って水をベットサイドに置くと母さんは下に降りて行った。

家族は熱の原因が夢だとは知らない。言った事なかったし、多分これからも言わない。

夢のせいで熱を出した時は大抵ぼーっと夢について考える。

わずか10分か15分ぐらいの出来事のはずだけど実際に起こった事なのかも分からない考えれば考えあるほど分からない不思議な夢。

・あの二人は誰なのか

・真っ黒い奴は何なのか

・紫の光の正体は何なのか

これが分かればと何度も考えるが分からない。
ゆっくりと時間が流れていった…